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北海道地震が馬産地直撃するも、
種牡馬たちは全馬無事の理由。
~一晩で70km歩く、夜間放牧の意外な利点~
posted2018/10/07 06:00
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph by
Photostud
9月6日午前3時7分に発生した北海道胆振東部地震の震源地を聞いて、文字通りに震撼した競馬ファンも少なくなかったろう。安平町といえば、ノーザンファーム、社台スタリオンステーションの所在地。種付け料4000万円の大種牡馬ディープインパクトをはじめ、日本の新旧の名馬の過半数が集結する場所の直下で、最大震度7という巨大な揺れが起きたのだから。
多数の犠牲馬が出ることも想像されたが、種牡馬たちは全馬無事。そこから南東に延びる日高地方の馬たちも含めて、崩れた馬房に押しつぶされてという事故は皆無だった。この事実は、馬の生産界に昼夜放牧という鍛え方がしっかり普及していることを示してもいる。厳寒期を例外として、夜間は馬を馬房にしまわないのがいまやスタンダードな考え方。昼間の放牧では走るよりも草を食むか休んでいるかが多い馬たちだが、夜間は肉食動物に襲われるかもという本能が勝り、ひたすら歩き回ることがわかったのだ。その距離は一晩で70kmにも及ぶという。最大で22時間放牧も可能との研究結果があり、それにならえば朝6時に収牧して2時間後の8時には再び放牧のサイクル。馬房に戻った2時間の間に、馬たちは栄養価の高い飼料をむさぼるように食べ、横になって熟睡する。体力増強疑いなしのスーパーメニューなのだ。