スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
大谷翔平と抜群の潜在能力。
トミー・ジョン手術は怖くない。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byAFLO
posted2018/09/15 11:00
9月7日の試合で19号3ランを放った大谷翔平。3試合連続本塁打は潜在能力の高さを象徴する。
長打率、OPSは大リーグ屈指。
逆にいうと、大谷の打撃はそれほど評価が高い。規定打席には達していないが、打席数のハードルを「300以上」に下げれば、彼の能力の高さははっきりと際立つ。
まず、大谷の長打率(5割8分9厘)を上回る打者は、大リーグ全体で3人しかいない。J・D・マルティネス(.633)、ムーキー・ベッツ(.629)、マイク・トラウト(.620)というMVP候補だけだ。このところの快進撃で、大谷は、マックス・マンシー(.578)やホゼ・ラミレス(.571)を追い抜いてしまった。
OPSに眼を転じても、大谷(.960)の上を行くのは、上記3人(いずれも1点以上)に加えて、ホゼ・ラミレス(.965)とポール・ゴールドシュミット(.961)の2人だけだ。この分野でも、大谷は、マックス・マンシー(.954)、アレックス・ブレグマン(.954)、マット・カーペンター(.946)といった注目株をしのいでいる。休養中のアーロン・ジャッジは.947という数字で今季を終える。
投手としての潜在的価値も高い。
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これだけの数字を残せるのだから、大谷はもちろん打者一本でもやっていける。だが、投手・大谷の潜在的価値は、これまた十分に高い。
まず直球の球速(154~156キロ)が大リーグでも屈指だ。彼よりも速い先発投手は、ルイス・セベリーノ、ノア・シンダーガード、ネイサン・イーヴォルディぐらいしかいないのではないか。
もうひとつ注目すべきは、打者のバットに空を切らせる率が高いことだ。大谷は、35パーセント近い確率で空振りを奪う。空振りでストライクを取る率も15パーセント強に達する。これより高い数字を残している投手はクリス・セールとマックス・シャーザーのふたりだけだ。両者とも、サイ・ヤング賞を射程に収めている。
となると、球団側と大谷側が協議し、トミー・ジョン手術の執刀時期を、(もし踏み切るとしたら)今季終了後に予定しているのは妥当な判断と思える。