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ナイキの広告戦略に全米が驚愕。
反トランプの元NFL選手が前面に。 

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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posted2018/09/08 09:00

ナイキの広告戦略に全米が驚愕。反トランプの元NFL選手が前面に。<Number Web> photograph by Getty Images

サンフランシスコのNIKEストアの屋上に掲げられたキャパニックの広告。全米で物議を醸している。

セクハラ問題でもイメージ低下。

 しかしその数日後、地下鉄で校外学習に出かける中学生の一団と乗り合わせた際、ふと彼らの足元を見ると、20人ほどいた生徒のうち8割以上がアディダスを履いていたのには驚かされた。

 CNN社の報道によると、ライバルのアディダスは北米で9期連続で20%ずつ収益を伸ばしている。またアディダスは2016年から2017年にかけて5%シェアを伸ばしている一方、ナイキは1.2%、ジョーダンブランドは3%シェアを落とすなど、苦戦を強いられている。

 また今年4月にはナイキの幹部たちが長年にわたり、女性社員にセクハラをしていたことが発覚。14人の幹部を処分したが、女性社員たちが人事部にセクハラの事実を訴えていたにもかかわらず、人事が黙認していたことも問題視されていた。昨今の「#MeToo」ムーブメントの流れもあり、会社のイメージは決していいものではなかった。

 今回、キャパニックを30周年記念キャンペーンに採用したのは、キャパニックの行動に同意し、支援する姿勢を見せることで、同社のイメージをポジティブなものに変換するための賭けだったのではないかと推測できる。

大型契約を結んでいる大学は……。

 今回の一件を受けてミズーリ州の超保守派の私立大学『College of the Ozarks(オザークス大学)』がナイキとの契約を打ち切ったが、追随する大学やチームが出てくるかに注目が集まっている。

「ほかの学校もナイキを切れ」という声も上がっているが、冬季シーズンが始まった今、契約を打ち切るというのは現実的ではないし、多くのスポーツ強豪校はナイキと長期の大型契約を結んでおり、途中で契約解除するとは考え難い。

 ナイキと2024年まで契約を結んでいるフロリダ大学は年間約3億4000万円相当の製品提供を受けるほか、フロリダ州立大学も年間約3億4000万円相当の製品と1億5000万円の資金提供を受けている。もし今回の一件で契約解除に至った場合でも、他社に同じような契約をできる資金力があるかには疑問符がつく。

【次ページ】 保守派などを敵に回しても。

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