サッカー日本代表「キャップ1」の男たちBACK NUMBER
元名古屋・中村直志が代表で知った、
Jの試合と決定的に異なる感覚とは?
posted2018/09/10 07:00
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph by
“Eijinho”Yoshizaki
ああ、自分も1試合でいいから日本代表になってみたかった。
出るとどうなるんだろう。
そんな想像をしてみたことはないだろうか。
中村直志は1度だけその場に立った。今から12年前の新監督の初陣、2006年8月9日のことだ。イビチャ・オシム新監督率いる日本代表は国立競技場にトリニダード・トバゴ代表を迎えた。
「憧れでしかなかった日本代表のユニフォームを着て、試合前にベンチに入った。まあ、試合前の国歌斉唱での雰囲気に圧倒されましたよ。Jリーグや高校サッカーで幾度も国立競技場のピッチに立ったんですが、あんな場面は見たことがなかった」
ふだんは思いのままに感情を表現するスタンドのファンが、ひとつの同じ行動に出るときだ。立ち上がり、君が代に集中する。なにより、サブである自分と同じベンチにいたイビチャ・オシム監督の、その初陣を撮影しようと大挙して自分たちを取り囲んだカメラマンの数に驚いた。
緊張ではなく……集中できない。
「もう、バックスタンドが見えないんじゃないかというくらいに大勢が取り囲んでいて。ワールドカップや予選でもない親善試合でそうだったんです。
これが代表の雰囲気なんだなって。注目度が格段に違う。
試合に集中しなきゃいけないんだけど、すでに集中を削がれていましたね。緊張したんじゃなくて、集中を失っていた。
初めて経験すると、いろんな情報があり過ぎたんですよ。そこでも平然としていた経験のあるチームメイトや、オシム監督に驚いたりして」
74分に長谷部誠と交代して、ピッチに入った。