石川遼が教えてくれた仕掛け人。

　フードコーナーで食べ放題、飲み放題企画を実施し、9番ホールの脇から入る特設エリアでは地域の人々によるフラダンスや音楽ライブが一日中行われていた。それぞれ、およそゴルフとは関係のないイベントばかりである。

　こんな企画、考えたのはいったい誰？　「KBCのダイボさんという方ですよ」。教えてくれたのは、選手会長の石川遼だった。

　主催するKBC（九州朝日放送）の大保一氏が、大会事務局長に就いたのは昨年春のことである。大卒入社後は番組制作や編成、報道に携わってパリ支局にも4年いたが、ゴルフは門外漢。接点と言えば「新入社員の時にこの大会のチケットの“もぎり”に来た」くらいだった。

アメリカ視察で松山英樹が……。

　イベント事業部で大役を任されたが、日本の男子ゴルフ界が低迷していることは知っていた。そして、それがどうも海の向こうでは事情が違うことも聞いていた。昨年2月、大会冠スポンサーであるRIZAPの幹部と米国に飛んだ。アリゾナ州でのPGAツアー・ウェイストマネジメントフェニックスオープンを視察するためだった。

　同大会は期間中の1週間で約60万人をのみこむ、世界でも稀なゴルフトーナメント。ギャラリー用の特設スタンドが360度を取り囲む16番パー3が特に有名。この観覧席だけで約2万人を収容し、異様な雰囲気を作り出す。

　大保氏も群衆を作ったひとりだった。「席を取るために、朝の開門と同時にダッシュしましたよ」。息を切らせて座った景色は壮観だった。野球場のような電光掲示板に選手の名前が走り、誰もが熱狂している。

　時はムービングデーの3日目。終盤の組でやってきた松山英樹がティショットをピンそば30cmにつけて“スタジアム”を大騒ぎさせた。バーディを決め、ボールをスタンドに無造作に投げ入れる。それをキャッチしたのはなんと、後ろに座っていた自分の上司だった。翌日、大会を2連覇した男のサインが入った白球はいま、RIZAP社屋に飾られているという。

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