野球善哉BACK NUMBER
花巻東と下関国際の高度な情報戦。
大胆な守備陣形と貫いたスイング。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2018/08/09 17:00
延長までもつれ込んだ一戦は下関国際に軍配が上がった。しかし花巻東の守備陣形も今後の甲子園のトレンドとなりうるものだった。
下関国際も布陣に気づいていたが。
もちろん、下関国際ナインもこのポジショニングに気づいていた。9回までに3つのショートゴロを記録した3番の川上はこう話す。
「大胆なポジショニングを取ってきているな、というのは分かっていました。相手投手もコーナーを突いてきて、9回までは相手の術中にはまっているなという感じでした」
相手の意図を感じながらも打開できないでいた。花巻東の的確なポジショニングが流れを引き寄せていたのだ。
下関国際の苦しい展開は続いたが、なんとか9回表に同点に追いつくと試合の潮目が変わり、延長10回、ついに相手の守備網を破った。
1死から1番・浜松晴天(はままつ・そら)がライト前安打で出塁すると、続く2番の甲山は引っ張ってレフト前安打を放った。
走者との連係、打席の立ち位置。
甲山は1打席目にショートゴロに倒れていた。その打球がヒットになったのは一塁走者のおかげだと語る。
「相手のポジショニングが大胆に寄っているのは分かっていましたけど、一塁走者の浜松がプレッシャーをかけてくれたのが大きかった。2球目でスチールを決めて、カウントがバッター有利になった。3ボール1ストライクで、監督も打ちに行っていいということだったんで、自分のバッティングをした結果、レフト前ヒットになりました」
続いて1死一、三塁で打席に立った川上が1ボール2ストライクからの4球目を強振すると、狭い三遊間を破る勝ち越しタイムリーを放った。
川上はこの時、打席での立ち位置を変えたという。
「少しインステップ気味にして打席に入りました。本当につなぐ意識で打席に入ったんですけど、スライダーが上手くバットにひっかかってくれて三遊間を破ることができました」
この回さらに1点を加え、下関国際はそのまま4-2で逃げ切った。