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御嶽海の“ちゃんこの味”は自分流。
学生出身力士の大相撲革命なるか!?
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byKyodo News
posted2018/07/28 11:00
祝勝会場にて。写真中央は先代出羽海親方(元鷲羽山)。そして、フィリピン出身の母・大道マルガリータさんと握手する御嶽海。
幕内42人のうち、学生相撲出身は13人。
15歳で入門する“叩き上げ”にこそ「仕込み甲斐」があると言われている大相撲界。
前相撲から初土俵を踏み、ちゃんこ番や付け人などの下積みをこなし大相撲界のイロハを一から体得しながら、いつしか「ちゃんこの味が染み込んだ力士」となっていく。一歩一歩成長してゆく姿を追えるのも、大相撲ならでは。思えば、今、横綱を張る白鵬、鶴竜、稀勢の里の3人も、まさに叩き上げだ。
幕内の土俵に上がる力士42人のうち、学生相撲出身者は13人(名古屋場所終了時)。
日大出身の輪島が1973年5月場所後に昇進して以来、学生相撲出身力士の横綱昇進はない。
昭和の時代の大相撲において、学生相撲出身力士は異端でもあり、主流は“中学卒の叩き上げ”だった。なかでも御嶽海の所属する出羽海部屋は、理事長や横綱を輩出する、角界でも随一の伝統と歴史を誇る名門部屋でもある。
“稽古嫌い”も指摘されるが……。
大学卒業後、実業団として名を馳せる和歌山県庁に就職が決まっていた御嶽海だったが、当時関取がいなかった名門部屋復活のためにも、大きな期待を持って迎え入れられた。
まるで代名詞のように“稽古嫌い”を指摘されるも、その相撲センスのよさと“要領のよいクレバーな面”が際だつことになってゆく。
昨年初場所で2横綱2大関を破り、初の技能賞を受賞した直後のインタビューで、御嶽海はこんなことを言っていた。
「センスはあると思います。僕だけじゃなく、誰でもセンスがなきゃ相撲は取れません。学生時代に、“遊び稽古”といって、土俵の外で内無双をやってみたり、いろいろ小技を試していたんですよ。体が自然とその感覚を覚えている」