濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
柔術家・関根“シュレック”秀樹、
プロレスデビューでUWFの夢実現。
posted2018/07/15 07:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
デビュー戦の選手がメインイベントに登場するのは異例だが、今回は違和感がなかった。
7月7日、横浜ラジアントホールで開催された『ハードヒット』のメインである。いわゆるUWF系、ダウンとロープエスケープがロストポイントとなり、反則厳禁のルール運用のもとで行なわれるプロレス興行。そこで阿部諦道(史典)と対戦した関根“シュレック”秀樹は、これがプロレスデビュー戦だった。
単なる新人ではない。関根は日本を代表する重量級の柔術家だ。
もともとは柔道出身で、静岡県警の「マル暴」だった。ブラジリアン柔術を始めたきっかけも、国際捜査係時代に地元のブラジル人コミュニティについて知るためだったという。
警察官ファイターとして知られるようになった関根だが、2016年、アジア各国で開催されるMMAのビッグプロモーション『ONE Championship』出場を機に職を辞している。後悔のない格闘技人生を送るためだったというが、その時点で43歳だ。“捨て身”の選択だったのは間違いない。
40代の元警察官がプロレスのリングへ。
ただ、そのことで活躍の場は広がった。
2017年には“武道エンターテインメント”を標榜する独自ルールの大会『巌流島』に参戦。さらに今年3月、ハードヒット初登場を果たした。この時は「柔術公開スパーリング」形式。大会プロデューサーでもある佐藤光留のチャレンジを受け止める立場だ。
柔術の練習に取り組んでいる佐藤の、言ってみれば“実力査定係”。しかし本人にはそれ以上の感慨があった。彼が足を踏み入れたのは学生時代に憧れたプロレス、それも“U”のリングだったのだ。
試合後、関根は観客にこう語りかけた。
「学生の頃はUインター(UWFインターナショナル)に狂っていた時代があります。実際に(入門を)目指していたんですけど、大学卒業間近の時に(団体が)活動休止になってしまって。自分の夢としては、レガースをつけてこのリングに上がりたいです」
レガースを着けて、つまり道衣姿の柔術家としてではなく“U戦士”の正装でリングに上がりたいということだ。
佐藤はその場で次回大会への出場をオファー。こうして7.17横浜大会出場が決まった。