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長期休場を乗り越え、復活を!
宇良を支える師匠の「気遣い」。
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byKyodo News
posted2018/07/10 11:15
昨年秋場所2日目の貴景勝戦で負傷し、車椅子で運ばれる宇良。また雄姿が見たい。
休場力士に対しての師匠の気遣い。
木瀬部屋のマネージャーである間嶋智仁氏は言う。
「休場中は、やはり凹むし、不安になってマイナスな感情が出ますよね。
そこでうちの師匠は、『そんな時こそ英気を養え』と。とにかく『食え! 食え!』といろいろ力士好みの食い物を買って来てくれるんですよ。休場中の1週間で10キロ太った力士もいるほどです」
休場力士に対しての師匠の気遣いは、他にもあった。
日々、同僚力士たちの稽古を目のあたりにし、焦燥感は募るもの。力士の本分である稽古ができずに「肩身の狭さ」を感じ、外出ができずに時間を持て余すことからも、電話番などの雑用を引き受け――また、頼られてしまう傾向にあるのだという。
「だから、うちの師匠は実家に帰してくれるんです。『実家の近くにトレーニングジムや治療院はあるか? あるなら、帰れ』と。部屋にいると、ついつい周囲に使われてしまうんですよね。『今は自分のためだけに時間を使え』と師匠は言ってくれるんです。
宇良も3月には実家の大阪に帰っていましたよ。
実家で療養していた力士たちが英気を養って、ひとりひとり部屋に戻ってくると、やっぱりお互いに嬉しいものです。37人の兄弟みたいなものですからね――」
「新しく生まれ変わった宇良が期待できるはず」
宇良は、いまだ稽古場で相撲は取っていない。しかし、ひたすらトレーニングに勤しみ、それまで160キロを挙げていたベンチプレスは、190キロを挙げられるまでになった。握力も「100キロを超した!」と喜んでいるのだという。
元力士でもある間嶋氏は、力強く言い切った。
「ほかの小兵力士とも異質で、宇良ならではの独特な相撲スタイルがある。あの相撲でより強くなる方法や感覚は、彼本人にしかわからないんですよね。だから師匠も本人に任せている、と言うのだと思います。いつ出場できるようになるかは、今はまだ、わかりませんが――。
その時は、新しく生まれ変わった宇良が期待できるはずですよ」