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「日本語でしゃべる方が楽」新大関・安青錦が明かす驚速の日本語習得法…ウクライナから来日3年半でなぜここまで?「一番は聞くこと。恥ずかしくない」
posted2025/12/17 17:01
初土俵から所要14場所で史上最速の大関昇進を果たした安青錦(付出入門者を除く)
text by

雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Daiki Watanabe
発売中のNumber1133号に掲載の[急成長の新大関]安青錦「ゼロから始めた日本語スタートアップ」より内容を一部抜粋してお届けします。
「日本語でしゃべる方が楽です」
「コウジョウって何ですか」
青い目をしたお相撲さんは首をかしげて聞き返してきた。
福岡県久留米市にある安治川部屋の宿舎、一年納めの九州場所に向け、関脇の安青錦は稽古を重ねている時期だった。このまま順調に成績を残していけば、自ずと次の番付が見えてくる。そこで「口上で使う四字熟語で思い浮かぶものってありますか?」と聞いてみたのだ。
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横綱や大関が昇進伝達式で話している短いスピーチのようなものですと説明すると、何のことか理解できたようだった。
「いや、まだ特に考えたことはないです」
史上最速を更新し続ける驚異的な出世スピードに負けず劣らず、日本語の習熟速度も相当なもの。インタビューも誰かが間に入るでもなく、イントネーションにもそこまで不自然さが感じられない。10月に外国特派員協会で行われた1時間という長丁場の会見も日本語でなんなく乗り切った。
「逆に日本語でよかったです。今はウクライナの人に会ってもかなりしゃべりにくい。日本語でしゃべる方が楽です」
そんな姿を見ているとつい勘違いしそうになるが、戦禍のウクライナから来日してまだ3年半、初土俵を踏んでから2年。普通はそんなに早く「口上」のことを考える必要のある力士などいないのだから、その意味を知らなくても当然だろう。
「一番は聞くこと。最初は聞いてわかるようになる」
戦後初の外国出身力士となった高見山から始まり、これまで約200人の外国人力士が大相撲の世界に挑んできた。ちょんまげを結った彼らは特に通訳もつけずに自然と日本語を操り、見る側の我々もそれをもはや当たり前だと思っている。
日本相撲協会に確立された言語教育プログラムがあるわけではなく、むしろその逆で、特別なものは一切ない。現在のルールでは、外国出身者は一定の期間を部屋で研修生として過ごしてから新弟子検査を受ける。相撲の基本を学ぶ相撲教習所に通う期間は日本人力士の倍の1年。ただ、そこでも日本語の授業はなく、他の日本人力士と同じように相撲の基本技術や所作のほか、書道や相撲の歴史、甚句などを学んでいる。

