フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
平昌五輪のフィギュアで疑惑の採点。
中国人ジャッジが処罰された裏事情。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byMenju Ryosuke/JMPA
posted2018/06/27 11:00
平昌五輪での男子シングルの表彰式。選手たちのためにも、より公正を期する防止策が望まれている。
ISUには「OAC」という監視機関があるが……。
もちろんジャッジは好きなように採点をし放題、という訳ではない。ISUの中に、ジャッジの採点を監視する機能は存在している。
ISUの中の、「Officials Assessment Commission (OAC)」 という機関がそれだ。
予め任命されたベテランジャッジたちが、各大会でジャッジたち全員の採点をモニターし、平均値と極端にかけ離れた採点があればそれをレポートしてきた。
匿名希望のあるベテランISUメンバーは、こう説明する。
「以前はジャッジが匿名制度だったため、OACはジャッジと採点をマッチさせることができなかった。そのためもあってナショナルバイアスが監視の対象になっていなかったんです」
OACがモニターしていたのは、あくまでも平均値とかけ離れた採点だった。
OACメンバーは、その疑問視された採点をどのジャッジが出したのか知らないまま、上部に報告する。それが誰の出した採点だったのかは、ISUの会長、フィギュア副会長、技術委員のみが把握していたという。
そしてISUフィギュア技術委員会、フィギュア副会長からそのジャッジの警告が送られる仕組みになっている。これは、現在も続けられている監査機関である。
ナショナルバイアスでの処分は初では!?
さて、今回中国のジャッジを罰したのはISUの中でも「Disciplinary Commission(懲戒委員会)」と呼ばれる機関だ。
フィギュアスケートに限らず、ISU傘下のスピードスケート、ショートトラック、フィギュアスケートとアイスダンス競技に関わる全てにおいて、違法行為への処分の決定をする機関である。
この懲戒委員会は立候補制でISUの選挙で選ばれ、現在のメンバーはドイツ(チェア)、オランダ、カナダ、ニュージーランド、スロバキアという(チェアを入れての)5人。ドーピング違反選手の処分、ジャッジ間での裏談義などISUの倫理に反した行為に対する処分もここが決定する。
だがナショナルバイアスでジャッジが処分されたというのは、筆者が知る限り今回が初めてのことである。