フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
平昌五輪のフィギュアで疑惑の採点。
中国人ジャッジが処罰された裏事情。
posted2018/06/27 11:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Menju Ryosuke/JMPA
ISU(国際スケート連盟)は6月19日、平昌オリンピックのペアと男子の採点において、中国ジャッジに不適切な採点があったとして、2人のジャッジに懲罰を科したことを発表した。
これまで何度かフィギュアスケートで「不正採点」が問題になったことはある。だがそのいずれもが、ジャッジ同士の裏交渉、あるいは競技中にジャッジ同士がコミュニケーションを取ろうとしたというような、わかりやすい「不正」行為だった。
今回の2人の中国ジャッジに対する罪状は「ナショナルバイアス」(自国贔屓)で、男子ではジャッジのチェン・ウェイグアンが選手のボーヤン・ジンに対し、またペアではジャッジのフアン・フェンが選手のウェンジン・スイ&ツォン・ハンに対し、他のジャッジに比べて極端に高い点を出したことが糾弾されたのである。
「どのジャッジもバイアスはある」
ナショナルバイアスというものの存在は、これまで暗黙の了解だった。自国のジャッジが抽選にはずれて大会のジャッジパネルの中に入りそびれると選手にとって不利になることは、採点スポーツでは常識である。
2004年秋から正式に施行された今の採点方式の作成に大きな役割を果たしたISUメンバー、カナダのテッド・バートンはかつて筆者にこう語ったことがある。
「ナショナルバイアスは全ジャッジにある。どのジャッジも、自国の選手を出来るだけ高い順位につけるために送り込まれてくるのです。だからこそ、一国ではなく複数のジャッジで採点をするのです」
身も蓋もないほど率直な言葉。問題は、どこまでが許容範囲内かということだ。
「どのジャッジも、自国の選手を出来るだけ高い順位につけるために送られてくる」というのは、あくまでも「選手の演技に見合った範囲内」でという条件付である。
最終的に10位に終わった選手の演技に、1人だけ1位をつけるジャッジはさすがにいない。
でもせめて9位か8位に押し上げたい、というのは自国ジャッジの親心。また自分を派遣してくれた国の連盟に対して「精一杯やりました」というアピールの意味もある。そのあたりの匙加減を、ジャッジたちは各方面からのプレッシャーを感じながら調整していくのである。