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コロンビア戦の感動をどう伝えるか。
フジアナウンサー、もう1つの戦い。 

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鈴木唯(フジテレビアナウンサー)

鈴木唯(フジテレビアナウンサー)Yui Suzuki

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photograph byYui Suzuki

posted2018/06/23 08:00

コロンビア戦の感動をどう伝えるか。フジアナウンサー、もう1つの戦い。<Number Web> photograph by Yui Suzuki

W杯はそれを伝えるメディアにとっても戦いなのだ。

内容は中継ギリギリまで決まらない。

 中継まで1時間。試合終了と同時に、興奮冷めやらぬ頭を、中継に切り替えます。スタジアムの外にある中継場所まで急ぐと、すでにカメラマンや音声さんといった技術スタッフがセッティングを終えて待っていてくれます。

 ここへ来てようやく中継の内容を詰めていき、コーナーの予定時間と相談しながらすべての内容を決めます。「そんなギリギリに決めているの!?」と思われるかもしれないのですが、試合が終わらないと内容を決められませんし、中継までの時間がわずかなため、いつもこのようにバタバタしています。このスリルがたまりません。

 さらにこの日、本来の中継は番組冒頭のみの予定だったのですが、日本が劇的な勝利を収めたということで、急遽スポーツコーナーの中でも中継をすることになりました。普段はこういうことはほとんどなく、日本の勝利がそれほど大きな感動を与えたからこそだと思います。

カザンから自分が何を伝えたいか。

 中継まで15分。何度かリハーサルを行います。そこでディレクターからこう伝えられました。

「とにかく現場の熱や盛り上がり、そして私たちが試合を生で見て感じたことを伝えてほしい」

 そこで私も、ロシアに入ってからの取材を振り返り、自分が何を伝えたいのかもう一度考えてみました。カザンでのトレーニングはすべてメディアに公開される予定が、急遽冒頭15分間のみの公開になることがほとんどでした。それほど勝利への執念が大きかったからだと思います。

 そんな中でも練習後に取材を受けてくれる選手のみなさんは、テレビクルーに対しても、新聞や雑誌の記者さんに対してもとても丁寧に対応してくれて、むしろこちらが「こんなに長い間取材を受けてくれて大丈夫なのだろうか」と思うほどでした。

 その姿を毎日見ていると、なんだか私も選手たちと一緒に戦っているような気持ちになってきて、スタジアムで見たあの勝利の瞬間の喜び、興奮、盛り上がりを何が何でも多くの人に知ってもらいたいという思いが湧いてきました。

【次ページ】 アナウンサー冥利につきる仕事。

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