フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
元祖“4回転王”エルビス・ストイコが、
羽生結弦へ貴重なアドバイス。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAkiko Tamura
posted2018/06/19 11:30
カナダにおける国民的スター、フィギュア界における世界的スターだったエルビス・ストイコの言葉と経験は、羽生にとっては貴重だ。
「この時代が来ることは予想していた」
ストイコは2002年ソルトレイクシティオリンピックで8位に終わった後、競技を引退。アイスショーなどで活動していたが、しばらくスケート活動を中止していた。
「'98年に怪我をしてからも自分をプッシュし続けてきて、あるとき自分の中で何かが壊れてしまった。それを癒すのに、とても時間がかかりました」
現在はプロ活動を再開し、カナダ「スターズオンアイス」などに出演するほか、北米各地でセミナーなどの指導にあたっている。
ストイコが競技引退してから16年。数種類の4回転が試合で跳ばれるようになった現在の男子をどう見ているのか。
「どんなスポーツでも進化して行くもので、特に男子はもっともっと難しいジャンプを、という方向へきたのは自然なこと。ぼくも練習では全ての種類の4回転を試していたので、今のような時代が来ることは予想していました」
今の4回転ジャンパーは体重が極端に軽い。
格闘技のマーシャルアーツでカナダチャンピオンになったこともあるストイコは、身長170センチでがっしりした筋肉質のパワースケーターだった。だが現在の4回転ジャンパーのほとんどは、羽生結弦やネイサン・チェンのように細身である。これはフィギュアスケートの適性体型が、変化していったせいだとストイコは語る。
「ぼくのような体型で4回転を跳んでいた最後のスケーターはエフゲニー・プルシェンコだったと思う。(アレクセイ・)ヤグディンはぼくと似た体型でしたが、彼も競技生活の後半にはかなり体重を落とした。このスポーツがその方向に行っているのは明らかでした。ぼくの今の体重は現役時代とあまり変わらず158ポンド(約71.7キロ)ですが、ユヅルは118ポンド(約53.5キロ)くらいでしょう。
もしぼくが今の選手たちと戦っていくとしたら、30ポンド(約13.6キロ)は体重を減らさなくてはならないことになる。でもいくらしぼっても8ポンド(3.6キロ)程度が限界で、とてもそんなに軽くはなれません」と苦笑する。