フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
元祖“4回転王”エルビス・ストイコが、
羽生結弦へ貴重なアドバイス。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAkiko Tamura
posted2018/06/19 11:30
カナダにおける国民的スター、フィギュア界における世界的スターだったエルビス・ストイコの言葉と経験は、羽生にとっては貴重だ。
5回転ジャンプもいつかは実現するだろう。
パワースケーターが4回転を跳んでいた当時と今では、ジャンプ技術が変わったのか。
「基本的には、技術が変わったというわけではありません。必要とされるのはタイミングと、身体を絞める瞬発力。ただ体重が軽いと、ジャンプがより高く上がり滞空時間が長くなる分、有利なわけです」
だがその一方で、着氷時の衝撃が身体に与える負担への懸念もある。
「自分はこういうがっしり体型だったので、繰り返されるジャンプの着氷の衝撃に耐えることができた。ぼくは現在46歳ですが、まだ滑り続けていられることは恵まれていると思う。今のトップ選手たちは何歳まで滑り続けることができるのか、そのときが来てみないとわかりません」
ストイコ自身練習でトライしてみたこともあるという、5回転ジャンプが実現する日は来るのだろうか。
「いつかは可能でしょう。でもそれには、道具がもっと進化しなくては。靴をもっと軽量にすることができれば、可能だと思います。3アクセルだって、4回転だってかつては不可能だと思われていた技ですから」
だがおそらくその身体にかかる負担によって、選手生命は今より短くなるだろうとストイコは懸念する。
予想通りだった……平昌オリンピックの予想。
平昌オリンピックは、現地ではなく妻と自宅のテレビで観戦した。ストイコは解説者として現地観戦した2014年ソチオリンピックでは、公式練習を見て羽生結弦の優勝をいち早く予言していた。平昌オリンピックは、どう予想したのか。
「妻のグラディスに、怪我は逆に祝福になることもある、と言ったんです。もちろん本番で滑れるほどに回復したらの話ですが、怪我のために自分の身体のことに集中するため、プレッシャーなど周りのことが気にならなくなるんです。ユヅルは元々4ルッツは必要ではなかったし、あれを取り除いたのは正しい判断だった。彼は最後まで優勝候補としてはずせない、と思っていました」
またネイサン・チェンのことも予想通りだったという。
「彼はショートで大失敗をして、フリーで上がって来るだろうと思っていました。いくら才能があっても、彼のような若者が初挑戦のオリンピックであれほど社会から期待されて負担にならないわけはない。大会前にナム・グエンにそう言ったら、後で『どうしてわかったんだ!』と驚愕していました」と笑う。
「自分で多くの大会を経験してきたので、予想は大体当たります。6分間ウォームアップの選手の動作、表情を見ていると大体何を考えているのかわかるんです」