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1発のシュートが雰囲気を変えた!
メッシ独占インタビュー秘話。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2018/06/13 18:00
世界で最もインタビューの難しい人物のひとりが眼前で穏やかに語る。その言葉は簡潔だが、力強かった。
目撃した、メッシの驚異的なシュート!
スタジオの床に自らボールをプレースして、目標との距離を測る。普段使っているボールやスパイクではない。床はツルツルのアクリルだ。ウォーミングアップもリハーサルもない。ディレクターの掛け声でカメラがまわった。あとはメッシが自分のタイミングで蹴るだけだ。
それほど間はなかった。5秒位だろうか。2、3歩の助走のあとに「ドスン!」という大きな音がスタジオに響き渡ったかと思うと、ボールは見事に小さなカメラを直撃していた。カメラアシスタントがあわててカメラに駆けよる。真っ直ぐにセットされていたカメラはぶら下がるように斜めに垂れ下がっていた。
「ウォー!!」
スタジオに歓声が湧き上がる。撮影中に声をあげてはいけないことくらい、そこにいた誰もが理解していた。それでも目の前で、あのメッシの驚異的な“シュート”を見てしまったら、自然と声が出てしまうのだ。そしてメッシも嬉しそうな笑顔。ニコニコ笑うというよりは、「してやったり」の満足げな表情。
もちろん撮影は1発OK。ここから雰囲気がガラッと変わり、その後はスタジオがやわらかな空気に包まれ、残りのCM撮影が行われた。
「家族は僕のすべてであり、僕の幸せだ」
撮影終了後に行われたインタビューでもリラックスした表情。その言葉のひとつひとつ、ときおり見せる真剣な表情から伝わってくるのは、彼のサッカー、母国、チームメイトに対する愛と情熱。
自分の力を誇示することも、自分を鼓舞するような発言をするわけでもない。きわめて冷静にチームと自分を見つめ、そして4年前あと一歩で届かなかったワールドカップ制覇の夢を叶えようとしている。
もっともやさしい表情を見せたのは、家族の話を訊いたときだった。
「家族は僕のすべてであり、僕の幸せだ。この世で最も大事なもので、唯一の存在が家族」