セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
イタリア新時代を託されたマンチーニ。
バロテッリ復帰と若き才能たちの登用。
posted2018/06/13 10:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
どんなに6月の太陽が熱く照りつけても、W杯のないイタリアは気の抜けたビールのようだ。
ロシアW杯開幕が近づく日曜の朝、近所のバールにぶらり出かけた。ユベントスの選手起用法について議論していた、古希以上と思しき人生の先輩たちに昔のことを尋ねてみる。
60年前のスウェーデンW杯のことを覚えていますか?
「イタリアが出られなかった大会のことなんて覚えてるわけなかろうが」
愚問でした。なら、自国開催だった'90年大会の夏は? さぞ盛り上がったでしょう。
「スキラッチがゴールするたびに水着で町に飛び出したもんさ」
じゃあ、スキラッチの控えFWが誰だったか覚えていますか?
彼らは一様に顔を見合わせた。
答えは、イタリア代表新監督に就いたばかりのロベルト・マンチーニその人だ。
世界の祭典へ出場する各国のニュースが飛び交う中、アズーリ新体制がひっそりと再スタートを切った。
60年ぶりにW杯本大会出場を逃した伝統国の再建はどんな名将にとっても骨の折れる難行だ。マンチーニに託された責務は重い。
かつてのスターが持ち込む新機軸。
甘いマスクのマンチーニはかつてサンプドリアやラツィオでスクデットを獲ったスター選手だった。
指導者転向後はインテルやマンチェスター・シティ、ガラタサライなどで各国リーグやカップ戦のタイトルを勝ち取り、国際経験も豊富に重ねてきた。
今季はロシアリーグでゼニトを率いたが、先月中旬、ゼニトとの間に残っていた2年総額15億円超の高給契約を解消。3分の1のサラリーでFIGC(イタリア・サッカー連盟)からの要請を請け負ったぐらいだから、アズーリ再建への思い入れは相当なものだろう。
強面で家父長的風貌を備えていた歴代の代表監督たちと異なり、ベビーフェイスとロマンスグレーの新指揮官は所信表明で飄々と言ってのけた。
「目指すはEURO2020での優勝だ。我々の夢はイタリアを然るべき高みに引き上げることにある」
壮大な目標をぶち上げたマンチーニは、アズーリに多くの新機軸を持ち込もうとしている。