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オーバーテイク王リカルドの我慢。
モナコを制した「神ドライブ」とは。 

text by

尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byHiroshi Kaneko

posted2018/06/03 08:00

オーバーテイク王リカルドの我慢。モナコを制した「神ドライブ」とは。<Number Web> photograph by Hiroshi Kaneko

'16年のモナコではポールスタートも、チームのミスで優勝を逃した。2年越しで悔しさを晴らして喜びを爆発させたリカルド。

セナの全身全霊のドライブは伝説に。

 このレースでセナは得意のオーバーテイクを披露することはなかったが、手負いのマシンを全身全霊で手なずけて、悲願のブラジルGP初優勝を成し遂げた。チェッカーフラッグを受けた後、精根尽き果ててコース上で止まってしまったシーンとともに、このブラジルGPは多くの人々に名レースとして記憶されている。

 今年のモナコGPでのリカルドも、この2つの名レースを思い出させる神業的な走りを披露した。ただし、今回のリカルドのトラブルはMGU-Kで、ギアボックスは正常だった。だが、リカルドは8速まであるギアのうち、6速までしか使用しなかった。それは「MGU-Kを失ったことで、リカルドは約160馬力のパワーを失ったから」(ホーナー代表)だった。

 MGU-Kによるアシストは主にコーナーの立ち上がりで行われる。ここでMGU-Kのアシストを失ったリカルドは、1つ1つのギアを引っ張ることで、エンジンの回転数をぎりぎりまで上げて使用し、コーナー立ち上がりでのパワーロスの影響を少しでも減らそうとしたのである。

トラブルを抱えていても速かった。

 さらにMGU-Kによるエネルギー回生はリアブレーキによって行われるのだが、MGU-Kが機能しなくなったことで、リカルドのマシンはブレーキ機能にも問題を抱えていた。ブレーキの異常加熱を避けるため、通常では使用しないほどブレーキバランスをフロント寄りにし、ストレートエンドでは早めにアクセルから足を離した。

 このような状態で、狭く曲がりくねったモナコを走行するのは、それだけでも難しい作業だが、リカルドは2番手に元王者のセバスチャン・ベッテルを従えて走行していたのである。その走りは、ベッテルをして「ダニエルがトラブルを抱えていたのはわかっていたが、その走りはトラブルを抱えていたとは思えないくらい速かった」といわしめたほど。

 そして、主役となったリカルドも、目に涙を滲ませてこう振り返った。

「だれかをオーバーテイクして勝ったレースというのもいいけれど、自分に降りかかった困難に打ち勝って手にする勝利も格別。今日のレースは間違いなく、これまでの僕の中でのベストレースだ!!」

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