ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
PGA参戦は「“ど”ハプニングです」。
小平智の溢れる野心と下から目線。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2018/05/31 17:00
物怖じせずに人の懐に飛び込む男は、PGAにも勢いよく飛び込んで行った。これから大きな物を吸収し続ける日々が始まるのだろう。
先輩には、自分からアプローチする。
とはいえ、彼はただ口を開けてチャンスを待っていたわけではない。その都度ターゲットを見定め、勇気を出して一歩踏み出してきたことに自負がある。
米国で先にプレーした岩田寛は、自分を目にかけてくれる先輩だ。昨夏に出場権を失い、再び日本でプレーしている今も、時折メッセージで大会やコースの情報をくれる。
ふたりは育った場所も出身大学も違う。年の差も8つある。その関係性も、小平が自ら開拓したものだった。
「寛さんがアメリカに行く姿を見て、勉強したいと思って自分から歩み寄ったんです。名古屋での試合の時に『一緒にご飯を食べさせてください』なんて言って……」
2015年の秋、一緒に出場した中国でのWGC HSBCチャンピオンズでは一緒に練習ラウンドをすることを願い出た。岩田は前年の同大会で3位に入り、米国への道を切り開いていた。
一気にステップアップした小平の背中を、今度は多くの後輩はもちろん、先輩が追うことになった。
ランキングは日本2位でも「下手くそ」。
けれど本人の現状認識はだいぶ違う。世界ランキングでは松山英樹に次いで日本人2番目のポジションを確保していても、「追われる立場だと思ってないっス。だっておれの方が下手くそだと思ってますもん。ゴルフを“勢い”でしかしていないから」
その思いを持ったまま、今度はPGAツアーに足を踏み入れると、また新しい目標とすべき存在がゴロゴロいることに気づく。
米国でのある練習日、コースチェックをしながらパー3のティグラウンドに立つと、小平は「世界基準なら8番アイアン……」とつぶやき、すぐに続けた。
「でも、オレは世界基準じゃないから7番!」
最高峰のレベルとの距離を客観的に測りながら、それに向かって鼻息荒く。それが小平智の勢いの正体である。
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