ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
PGA参戦は「“ど”ハプニングです」。
小平智の溢れる野心と下から目線。
posted2018/05/31 17:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Yoichi Katsuragawa
扉の向こうには想像すらしたことのないものが入っていた。
5月、テキサス州ダラスで行われたAT&Tバイロン・ネルソン。小平智は2年前に開場されたばかりのコースのクラブハウスに足を運んだ。個人用に設けられた真新しい木製のロッカー。その棚には、一通の知らせが静かに佇んでいた。
「プレジデンツカップ……?」
2年に1度、世界選抜と米国選抜によるプライドをかけた対抗戦。欧米国籍の選手を除くメンバーで構成される世界選抜チームは、今年6月の全米オープン期間中にミーティングを行うという。小平が手にしたのはその案内だった。
「それで、その試合はいつやるんですかね?」
次回大会は2019年12月、世界選抜のホームである豪州で行われる。実際に代表選手が決まるのは来年秋とまだ先の話だが、キャプテンを務めるアーニー・エルスは候補になるであろうプレーヤーたちにさっそく声をかけたわけだ。
スポット参戦から、急にVIP待遇。
4月のRBCヘリテージで飾ったPGAツアー初勝利は、小平の環境を激変させた。
2020年夏までのシードをもとに、プロ転向から約7年、身を置いてきた日本ツアーから、主戦場を米国に移すことになった。スポット参戦の時とは立場が違う。
さらに、その扱われ方は、下部ツアー等から這い上がってきた選手たちとも一線を画す。予選ラウンドからトップ選手と同じグルーピングになり、大勢のギャラリーやカメラの前でプレーできる。
確かに世界ランキングの序列で言えば、小平は現在、フィールドをリードする存在であるのは間違いない。AT&Tバイロン・ネルソンでは出場選手のうち上から6番目。翌週のフォートワース招待でも12番目だった。
とはいえ、わずか1カ月前、いやいやマスターズ出場を目指して必死になっていた昨年末との状況を比べれば、「こんなに良い組に入っちゃっていのかな……」とつぶやくのもうなずける。