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ベンゲル、王様になった革命家。
その22年間の絶対王政を検証する。
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph byJerome Prevost/L'Equipe
posted2018/05/30 17:00
新スタジアムにおいて輝ける栄光に包まれていたアーセン・ベンゲル。だがその後、他のビッグクラブとの競合には負け続けた。
アーセナル内部で起こったクーデター。
実際に起こったのは……革命とは逆の一種のクーデターだった。
アメリカの経営陣の意向により、数カ月前からエクゼクティブディレクターのイヴァン・ガジディスは、様々なセクションで新たな責任者を起用していた。
その数は9人に及び、その中にはドルトムントでスカウト部門を統括していたスベン・ミスリンタットとバルセロナの元ディレクターであるラウル・サンレイが含まれていた。この時点で、反ベンゲル革命はすでに進行していた。
すでに1月の時点で、この改革がベンゲル主導のものではないこと、神聖不可侵であったクラブ内での彼の力が、侵食されていることが明らかになっていた。
さらに、サポーターも反旗を翻した。
エミレーツ・スタジアムには空席が目立ち始め、スタンドのあちこちに露出する赤いスペースは、死に体を呈したクラブが流す血のようでもあった。
それでは今のこの状況で、アーセン・ベンゲルの後継者はだれが最も適任であるのか?
最適任者は……22年前の彼自身である。
ベンゲルが去った後のアーセナルは、かつての彼のような革命家を必要としている。
ベンゲルが失った……昔日の革命的情熱。
ここ数年のベンゲルで批判すべきは、彼が1996年にハイベリーにやって来たときに見せたチーム改革への情熱と激しさ、あるいは'87年にモナコに赴任したときや'94年に名古屋グランパスに着任したときに見せた情熱と激しさを失ってしまったことである。
いずれの場合も彼に課せられた使命はチームの変革でありクラブの変革であった。
しかしながら……ひとりの人間が、常に変わることなく改革の原動力であり続けることが可能であるのだろうか?