猛牛のささやきBACK NUMBER
若手から“師匠”と慕われる35歳。
オリ山崎勝己の役割とこだわり。
posted2018/05/18 10:30
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
NIKKAN SPORTS
オリックスのルーキー捕手、西村凌は質問魔だ。隙あらばコーチや先輩捕手を質問攻めにする。その西村が「師匠」とあがめるのが、35歳のベテラン捕手、山崎勝己である。
「あの人の頭の中はすごい。レベルが違います。例えば、打たれないようにというだけでなく、ベンチが納得する配球とか、でも譲れない配球とか、とにかく細かくいろんなことを考えていて、自分が話を聞いていても、正直よくわからへんな、ということもあります。
でも、『なんであの場面はあの球で行ったんですか?』とか、気になったことを聞くと、ひたすら教えてくれます」
山崎は、「あいつも、教えられないような選手にならないとね」と笑った後、こう言った。
「まあ、僕のひとことで何か気づいてくれたら嬉しいじゃないですか。僕があいつと同じぐらいの年齢だったら、もしかしたら言わないのかもしれないけど。全然、話しますよ、聞かれたら」
「ちょっと慎重になりすぎじゃないか?」
昨年は、リードの怖さを知り、大胆な配球ができなくなっていた若月健矢にこうアドバイスした。
「誰もが通る道だし、オレにもそういうことはあった。ちょっと慎重になりすぎじゃないか? いいところで打たれたからって、その球を消して、あれも消してこれも消してとやっていたら、選択肢が狭くなるし、ピッチャーも苦しいやろ」
そう言って、いくつか例を挙げて解説した。
例えば、他球団のバッテリーが、オリックスのステフェン・ロメロにチェンジアップをスタンドまで運ばれ、次回の対戦以降、そのチェンジアップを使えなくなっていた。
「お前も今、ああいう感じに見えるぞ。別に使えないことはないんだよ。あれが低くきていたら空振りになっていただろうし。打率を見れば2割7分とか、打っても3割、つまり10回のうち3回しか打たれないのに、いいところで打たれたからってその球を消してしまったら、選択肢が絞られてもっと打たれる率が高まってしまう。
それより、もっとジェスチャーで『低く』というのを伝えていたらどうなったのか。問題は球の選択じゃないんじゃないか」