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イニエスタのバルサ退団が正式決定。
感動を呼ぶペップの惜別メッセージ。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2018/05/10 07:00
「バルセロナらしさ」の中心はシャビとイニエスタだった。チームが何を失ったかは、時間が経ったのちにわかるのかもしれない。
「優れた選手」の定義さえ変えてしまった。
話を戻そう。
今シーズンからバルベルデ体制となり“元いた場所”に戻ることができたイニエスタは、バルサに残る決心をした。しかしシーズンが進むにつれ、自分の身体が数年前のようには反応しないことを改めて思い知ったのだろう。
それでも、結論を出すまでには何カ月もかかったという。
12歳でバルサに入団してから今日まで、イニエスタは数え切れないほどの功績を残しているが、最も重要なのは世のサッカーファンに「優れた選手」を再定義させたことだ。
彼がバルサのトップチームに上がろうとしていたころ、スペインではまだ頑丈な身体を相手にぶつけながらボールを運ぶサッカーが幅を利かせていた。体格は大事な武器だった。だから、背が低く線が細い選手を見ると、コーチやファンは苦い顔をしたものだ。
そんな状況をイニエスタは、シャビとともに変えてしまった。バルサとスペイン代表の中盤に立って、自分よりも一回りも二回りも大きなマーカーのチェックを卓越したボールコントロールで受け流し、攻守のキーマンとしてタイトル獲得に貢献した。
卓越したテクニックは、体格の不利を補うばかりかチームの力になることを証明した。彼らがいたおかげで、練習という努力が夢の実現に繋がることに気づき、勇気づけられたサッカー少年が世界中にいるはずだ。
シャビが語る「時間のコントロール」。
イニエスタのテクニックのなかには、戦術的に優れたものもあった。なかでも「時間のコントロール」は試合の展開に対して強い影響力を持っていた。
ボール保持とポジショニングを重視するサッカーでは、状況を見て意識的に時間を作ることが必要になる。達人はシャビだったが、イニエスタも名人だった。
シャビいわく今のバルサで時間をコントロールできるのは、イニエスタの他ではブスケッツとメッシだけとのことなので、来季のカンプノウではこれまで以上に縦にボールが動くかもしれない。