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イニエスタのバルサ退団が正式決定。
感動を呼ぶペップの惜別メッセージ。
posted2018/05/10 07:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
昨年の10月6日、バルセロナはイニエスタとの契約延長を発表した。契約期間はイニエスタが望むだけ――。つまり生涯契約だ。
バルトメウ会長は誇らしげに笑顔を見せた。
「クラブ史上初めてのこと。異例の決定です。アンドレスはいまも続くバルサの一大成長期の一部であり、'03年からクラブに安定をもたらしてきた。毎年選手は入れ替わるけれど、アンドレスはずっとここにいた」
条件は毎年4月30日までに続行の意思をクラブに伝えること。わずか一言だけで、翌シーズンも自動的にバルサでプレーできるのだから、イニエスタも満足そうだった。
「破格の対応だ。とてつもなく名誉なことだと思う」
ところが去る4月27日、イニエスタは記者会見を開き、今季いっぱいでバルサを去ることを明らかにした。
今年で34歳となり、まもなく自分のパフォーマンスが落ちていく予感がある。自分にすべてを与えてくれたクラブのために、自分の最高のプレーができなくなるのは悲しい。だから、身を引くことにした……。
実にイニエスタらしい、愚直な理由だ。
22歳から発揮していた負けず嫌い。
生涯契約に同意する前も、彼はバルサ退団を考えていた。
2014-15シーズンにルイス・エンリケが監督に就任して以降、チームにおける役割が徐々に変わって、昨季のリーガ通算出場時間は、初めて1000分を越えた2004-05シーズン以来最少となる1329分だった。
先発が減って交代出場が増えた結果だが、イニエスタは不満を感じていた。チームの力になりたいという気持ちとポジション争いに負けたくないという気持ちがあったからだ。
その負けじ魂こそが「バルサで生き残るカギ」で、「自分はかなりの負けず嫌いだ」とイニエスタはスペイン国内紙で語ったことがある。
実際、2006年11月に筆者がインタビューしたときにも、前シーズンも前々シーズンもほとんどが交替出場だったことに触れて「もっと先発したかったのでは」と問うと、自信ありげに「もちろん」と答えたので、少々驚いた。
当時イニエスタは22歳。ポジションを争っていた相手はロナウジーニョ、デコ、ファンボメルといった歴戦の強者である。