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大谷翔平とベーブ・ルースの23歳。
13勝11本塁打から100年後の新伝説。

posted2018/04/20 17:00

 
大谷翔平とベーブ・ルースの23歳。13勝11本塁打から100年後の新伝説。<Number Web> photograph by AFLO

「見たことがないもの」を人はまず警戒し、疑い、そして熱狂する。大谷フィーバーはまだ止まりそうもない。

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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AFLO

打者・大谷    8試合33打席30打数11安打 打率.367 3本塁打11打点 7三振3四球
打者・ルース 10試合33打席27打数11安打 打率.407 3本塁打10打点 7三振4四球

 これは今年の大谷翔平と「二けた勝利&二けた本塁打」を達成した1918年のベーブ・ルースの「打席数」で合わせたシーズン序盤の打撃成績だ。

 1918年はまだ指名打者制度がなく投手も普通に打席に立っていた。10試合に出場した時点でルースはすでに5試合(19打席)に投手として登板しているので、大谷とルースの投手成績を比較するなら、大谷にとっての3試合目にあたる4月17日のレッドソックス戦までだ。

投手・大谷  3試合15投球回2勝1敗 防御率3.60 19三振4四球
投手・ルース 3試合26投球回2勝1敗 防御率2.77 8三振8四球

 打撃成績はとても似ているが、投手成績はルースに一日の長がある。だが、先発したら完投するのが普通だった時代のルースと、投手分業制が確立している時代に投げる大谷の投球回は比べることは難しい(大谷は三振を多く獲るタイプで、ルースは打たせて取るタイプの投手だという違いぐらいは分かる)。

大谷は過去の誰とも違う。

 最大の敬意を持って書くが、そもそも大谷とルースは比較するのが難しい。

 大谷が大昔の「国民的英雄」に遠く及ばないという意味ではない。大谷の「二刀流」とルースのそれが性格上、まったく違うので比較するのは難しいという意味だ。

 過去に出版された様々な伝記によるとルースはレッドソックス時代の最後、つまり1918年から1919年にかけて、暴飲暴食したお陰で巨漢体質にどんどん変わり、投手から打者へ転向せざるを得なかったという。

 誤解を恐れずに言えば、現代のプロ野球選手のような自己管理をしなかったルースは、20代前半ですでに一流投手としての身体能力を失いつつあり、その一方で打者としての潜在才能を開花しつつあったのだと思う。

 大谷は違う。彼は最初から「二刀流」を前提に戦っている。投手と打者のどちらが優先したわけではない。どちらも同時に達成するために、そのための肉体を作り上げてきた唯一無二の存在だ。

 ルース以外にも野手から投手へ、あるいは投手から野手へ転向した選手たちは大勢いるけれど、それらの選手たちとも混同するのはおかしい。「そうならざるを得なかった」のと「最初からそれを目指していた」というのは決定的に違うのだ。

【次ページ】 ルースの二刀流はほぼ1918年限定。

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