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15歳で五輪、19歳で挫折、そして。
競泳・渡部香生子が2年ぶり代表復帰!
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2018/04/22 08:00
長らく代表を離れていた印象がある渡部香生子だが、まだ21歳の大学生。キャリアを築きなおす時間はまだ残されている。
一度離れたことで気づいた水泳の楽しさ。
五輪のあと、競泳を辞めようと考えた。
「引退して、(大学卒業後は)仕事でもした方がいいかなと思いました」
2017年もまた、成績の上では苦しいシーズンとなった。4月の日本選手権は、冬季の泳ぎこみの時期に怪我をした影響もあって結果を残せず、世界選手権の代表を逃したのである。
2012年から毎年オリンピックや世界選手権などに出場してきた渡部は、6年ぶりに日本代表から外れることになった。
だがその夏、渡部はしばらく目にしたことのないような表情を見せた。日本学生選手権でのことだ。この大会で100、200m平泳ぎを制した渡部は、笑顔を浮かべていた。
「今は泳ぐことを楽しめています」
2015年の世界選手権のあと、苦しい時間が続いた。その中で考えた末、1つの思いに至った。
「どん底を経験して、分かることがあります。今まで水泳しかやってないのに、何ができるんだろう。ただ水泳から逃げようとしてるだけだと気づきました」
日本代表のメンバーでなくなったことは、一方では挫折でもあったが、もう一方では自分とゆっくり向き合う時間にもなった。
15歳から日本代表として戦い続け、注目される位置で記録や結果を求められてきた。その足が一度止まったことで、自身にとっての泳ぐ意味をあらためて考えることができたのである。
「これからの一生で、絶対忘れない夏になりました」
「よくても悪くても、また次に」
こうして迎えた今年の日本選手権。最初の種目の100m平泳ぎでは3位で代表入りはならなかったものの、200m平泳ぎ決勝では最初の50mを3位でターンすると、その後の50mのラップは36秒台をキープし2位となった。
「ちょっと前進したかなと思います。久しぶりに200mでいいレースできたなと思います」
レースをそう振り返った渡部は、100mのあとの心境をこう明かした。
「正直、200mは棄権したいくらい心が折れちゃったんですけど、せっかく頑張ってきていたので、ここであきらめちゃいけないなと思いました」
200m決勝のスタート前には、こう気持ちを立て直していた。
「よくても悪くても、また次に頑張ればいいやと」