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デビュー3戦全勝の石井一久氏が語る
大谷翔平、成功するための「失敗力」。
posted2018/04/17 12:45
text by
宮司愛海(フジテレビ系『S-PARK』MC)Manami Miyaji
photograph by
AFLO
過去日本人メジャーリーガーで3戦全勝した投手は、フジテレビ系「S-PARK」解説者の石井一久氏だけである。宮司愛海キャスターが、石井氏に大谷選手の快進撃の秘密を尋ねた。
日本の時のフォークと落差が全然違う。
――大谷選手が次戦のレッドソックス戦に勝てば、2002年春にヤクルトからドジャースに移籍した石井さんが記録した、デビュー戦から3戦全勝に並びますね。
「はい。でも、大谷選手が僕のときと違うのは、絶対的な安定感で完成度の高いピッチングができていることです。7回一死までパーフェクトだった前回登板を見ていても、スプリットというかフォークの落差が凄いじゃないですか。ああいう安定感は僕にはなかったですね」
――テレビで見ていても凄い落差ですよね。
「スプリットではなくあえて日本流にフォークボールといいますけど、大谷選手、日本の時のフォークとアメリカのフォーク、落差が全然違うんです。アメリカの方がより変化が鋭くて大きい。なぜなら、アメリカのボールは少し大きくて若干重い上に縫い目も高いから、フィーリング的に日本と同じように投げているつもりでも、ボクの経験上、アメリカの方が落差が大きくなるんですよね。あの大谷選手のフォークは、バッターからかなりやっかいなボールとしてとらえられていますよ」
――日本の野球とメジャーではボールも違う、環境も違うということですが、大谷選手はどうしてすぐに順応することができたんでしょうか。
「大谷選手は『開幕してからが本当の勝負』ということで、キャンプを過ごしてきたことが良かったんじゃないでしょうか。キャンプ中には変化球をフォークしか投げない試合があったり、スライダーしか投げない試合があったり、それで何度も失敗していたじゃないですか。でも、それは確実にステップを踏んで『成功するための失敗』だったんです。そういうプロセスを経て、まずはボールに慣れていったんだと思います。
僕がメジャーに移籍した時も、キャンプでは防御率は10点超えていましたし、ホームランを何発も打ち込まれたりして、『ここで力を見せなきゃいけない』って、ちょっと力みがあったんです。でも、そこでチームメイトから『キャンプはキャンプなんだから、力を見せる必要はないんだよ。おまえの実力は知っているんだから、開幕してから見せてくれればいいんだ』と。僕はそこでハッと気付いたんですけど、大谷選手の場合はそんな風に言われなくても、自分でスケジューリングして、開幕に合わせてきたんだと思うんです」