失敗を生かすのは、松井秀喜に似ている。

――メジャーのボールはやはり日本のボールと比べて滑るんですか？

「テレビ中継で、大谷選手が右手に息を吹きかけているシーンが時々映りますけど、あれは寒いわけじゃないんです。アメリカでは、どうしてもボールが乾燥しちゃうんで、手は少しでも湿らせておきたいんですよね」

――石井さんもデビュー3戦目の頃は、ボールが滑る感覚はありましたか？

「僕はあまり神経質じゃなかったのでそれほど気にならなかったです。キャンプで大谷選手に聞いたときも、そんなに滑るという感じじゃないですねと。それより、マウンドの傾斜の方が気になるって言ってましたね」

――日米のマウンドはそんなに違うんですか。

「日本のマウンドは傾斜が緩やかな“お椀型”なのに対して、アメリカのマウンドは角度がきつくて段差のように感じるんですよね。大谷選手も脚を踏み出して力が伝わるタイミングを、キャンプ中に念入りに調整したんだと思います」

――大谷選手はそういう失敗を成功につなげていく力を昔から持っていたんですか？

「と思いますね。バッターとしても、もちろん入団当初から才能の片鱗は見せていたんですが、当時は5年で今の位置までこれるという感じではありませんでした。それがプロで1年、2年、3年とやっていく中で、飛距離が出るようになり、バットコントロールがうまくなり、左方向にもホームランが出るようになり……。

　そういうところは昔、ジャイアンツからヤンキースに移っていった松井秀喜選手を彷彿とさせます。年を追うごとに1つずつ確実に何かを掴んで、成長していくんですよね」

――発売中のNumberの“大谷語録”の中にも、昨年秋のインタビューで語った「(自分には）伸びしろしかない」という言葉がありましたね。

「僕も彼には『伸びしろしかない』と思うのは、年々確実に成長を続けられる力ですね。さすがに23歳ですから、身長はあれ以上伸びないと思いますけど（笑）」

――193cm。すでに十分大きいですからね（笑）。日本のみならず、アメリカでも注目されるわけですよね。

「アメリカの方って野球を見る目が厳しくて、拙いプレーをすればすぐブーイングするし、素晴らしいプレーをすれば必ずスタンディングオベーションをしてくれる。だからこそ、大谷選手を『本物が来たな！』という感じで見ていることが、僕にも伝わってくるんですよね。今の反応が特別じゃなくて、それがこれから大谷選手を見る基準になってくるんじゃないかという気がします」

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