酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
1000奪三振の則本昂大、実は……。
新たな投球術を示すデータの存在。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2018/04/12 16:30
日本の誇る奪三振王、則本昂大。その則本が三振以外の投球術を身につけたとしたら……。
三振を奪う力と、別の料理方法の両立。
昨年、NPB記録の8試合連続二けた奪三振を記録したのは6月8日のことだった。以後も7月まではK/9は高かったが、8月以降10.0を割っている。
昨年、楽天は前半戦はソフトバンクと首位を争う活躍だったが後半戦、クローザーの松井裕樹が離脱するなど戦力ダウンに苦しみ、急失速した。エースの則本の負担が大きくなり、8月以降は投球回数も増えた。
そんな中で、これまでよりも長い回を投げることが求められるようになった則本は、奪三振にこだわることなくアウトカウントを稼ぎ始めたのだ。
数字を見れば、このモデルチェンジに成功したことがわかる。K/9の数字は下落したが、実はこの間、防御率は悪化していないのだ。
このモデルチェンジは、則本の今後を考えても望ましいものだ。
彼はデビュー以来、2807球、3221球、3196球、3384球、2916球と毎年のように3000球前後を投げている。多くのNPB投手が3000球を投げた翌年は多かれ少なかれ戦線離脱することが多い中で、稀有なスタミナではある。しかし、長く一線のマウンドに立つためには効率的な投球を覚えることは重要だ。
とはいっても、毎年のように激しい奪三振王争いを続けてきた大谷翔平がMLBに移籍した。則本昂大は、モデルチェンジ後も奪三振王争いの最右翼なのは間違いない。
則本は「三振が奪えなくなった」わけではなく、いつでも三振を奪える力をもちながら「別の料理の仕方」を覚えたのだ。選択肢が広がったわけだ。
ライバルは西武の菊池雄星、ソフトバンクの千賀滉大あたりだろうが、タイトル獲得の好機と見るや、伝家の宝刀を抜いてばったばったと三振を奪うのではないか。
“奪三振だけじゃなくなった”則本昂大に期待したい。