酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
1000奪三振の則本昂大、実は……。
新たな投球術を示すデータの存在。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2018/04/12 16:30
日本の誇る奪三振王、則本昂大。その則本が三振以外の投球術を身につけたとしたら……。
則本が昨年進化した「次の次元」。
余談だが、則本昂大は滋賀県の八幡商業の卒業生だ。私は野球とは別件でこの高校を何度か訪れる機会があった。ウィリアム・メレル・ヴォーリズというアメリカの名建築家の手になる美しい校舎が残っているが、この学校は、単なる商業高校ではなく、大宅壮一をして「近江商人の士官学校」と言わしめた名門だ。
古くは「生命保険の神様」と言われた川瀬源太郎やワコール創業者の塚本幸一、伊藤忠二代目社長の伊藤忠兵衛などのビジネスマンを輩出してきた。この学校のOBの則本昂大は、野球においてもそろばん勘定に秀でているのだ。
昨年、則本は8試合連続二けた奪三振というNPB記録を打ち立てた。この記録は当面破られそうにない。則本昂大はこれからも、NPBの奪三振記録を次々と破るのだろうか?
私はそうは思わない。
則本は「次の次元」へと進化を始めていると思う。
それを表す数字をいくつか紹介しよう。
則本は、2013年のデビュー以来、ずっとローテを維持し、毎年規定投球回数をクリアしている。このこと自体凄いことだ。年度ごとのK/9の推移を見るとこうなる。
2013年 7.09 (投球回170奪三振134)
2014年 9.06 (投球回202.2奪三振204)
2015年 9.94 (投球回194.2奪三振215)
2016年 9.97 (投球回195奪三振216)
2017年 10.76 (投球回185.2奪三振222)
2018年 8.40 (投球回15奪三振14)
則本はデビュー2年目から4年連続で奪三振王。年々K/9の数字が上昇し、2017年には10.76と凄い数字になったが、今季は8.40と大きく落ちている。
偶然か? 調子が上がらないのか?
私はそうではないと思う。則本は昨年、モデルチェンジをした。そして三振だけに頼らない投法に変わったのだ。
昨年の月ごとのK/9を見ればそれがわかる。
〇2017年
3-4月 11.08 (投球回26奪三振32)
5月 12.94 (投球回32奪三振46)
6月 11.53 (投球回32奪三振41)
7月 12.32 (投球回19奪三振26)
8月 8.16 (投球回32奪三振29)
9-10月 9.67 (投球回44.2奪三振48)
〇2018年
3-4月 8.40 (投球回15奪三振14)