くまさんの蹴球漂流記BACK NUMBER

詐欺師、強盗、スリがうごめく南米。
メッシ、ネイマールらが育つ背景が?

posted2018/04/10 07:30

 
詐欺師、強盗、スリがうごめく南米。メッシ、ネイマールらが育つ背景が?<Number Web> photograph by Takashi Kumazaki

左からフラメンゴ、バスコダガマ、フルミネンセ、ボタフォゴの紋章が描かれたリオの壁画。こういう作品との出会いがあるから、路地歩きはやめられない。

text by

熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

PROFILE

photograph by

Takashi Kumazaki

 行きたいところに行って、サッカーを見るという呑気な暮らしをしていたら、「旅先での出来事を書いてほしい」と頼まれた。

 私がやっていることは、実のところふたつしかない。

 行くあてもないまま路線バスに乗る、もしくは路地を歩くということ。そうすることで、路地に暮らす人々の目線にほんの少しでも近づきたいと思っている。

 たぶん有名人より、名もない人々に惹かれているのだろう。メッシも、ロナウドも、かつては路地の小僧だった。

 その代償として3度襲われている。

 1度目は2003年、イタリアの長距離列車で。

 2度目は2004年、南フランスのマルセイユで。

 そして3度目は2014年、ブラジル・ワールドカップの期間中、港町サルバドールで。

 学習能力がないといえばそれまでだが、すべてが無駄だったわけではない。ちょっとした教訓は持ち帰っている。

すれ違ったブラジル人が急に……。

 サルバドールが危ない街だということは知っていたつもりだ。

 スタジアムのプレスセンターで原稿を書き終え、安宿への帰路につく。すでに陽がとっぷりと暮れた道をひとり歩いていたら、すれ違ったブラジル人に「そっちは危なくない?」と訊かれた。

「大丈夫、ぼくはまだ生きているよ」

 その夜、仕事から解放された嬉しさもあって、石畳と中世の教会が美しい世界遺産の広場でひとり呑み歩いていたら、なんだか楽しくなってしまい、気がつけば夜中の1時をまわっていた。そろそろ帰らなきゃと歩み出した帰り道、突如、背後から首を絞め上げられたのだ。

「金出せ」と言われたら、黙って渡せるように準備していたのに……。

 物陰に引きずり込まれた私は、気を失いつつも渾身の力を振り絞った。体当たりするかのように、背中にへばりついた強盗を電柱にぶつけたのだ。すると首に巻きついた腕がはらりとほどけ、私はよろよろと広場へと逃げ出した。

【次ページ】 1人でやり切ることは日々の生活から。

1 2 NEXT
#リオネル・メッシ
#クリスティアーノ・ロナウド
#ネイマール

海外サッカーの前後の記事

ページトップ