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本塁クロスプレー、捕手の位置は?
センバツで気になった「暴力と知恵」。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/04/08 17:00
大阪桐蔭を筆頭に、大会を通じて打撃戦が多かった今大会。コリジョンルールの影響で入った点数はどれほどあっただろうか。
「追いタッチ」で入った得点は多かった?
本塁に突入する走者の邪魔にならないようにホームベースを空けるために、捕手がホームベースの前で返球を受けるので、そこから走者にタッチにいっても、ほとんどすべて「追いタッチ」のセーフになってしまうことだ。
私の“目勘定”だが、今回のセンバツの総得点数331点のうち、およそ5分の1ほどは、捕手がホームベースの前で返球を捕り、そこから追いタッチにいったためのセーフだったと見ている。
試合中盤からは、返球を受けた捕手があきらめてしまって、すぐ背後を走者が駆け抜けているのに、タッチにもいかない場面もあったりして、あれでは内野手、外野手の生還阻止意欲もそがれてしまうのではないか。投手だって、あれではたまらないな……と、見ているこっちのほうがややブルーな気分になったほどだから、現場の選手たちの心情はいかばかりかと、ひどく心配になったものだ。
捕手は、ホームベースの前にいなくてはならないのか?
疑問に思って調べてみたら、そうでもないらしい。 いろいろ細かい約束事はあるようだが、要はホームベースの上と、走者が駆け抜ける走路を空けておけ、という理解で問題はなさそうである。
捕手が立つのはどこがベストか。
ならば、捕手はどこに立って返球を待つのがよいのか?
実際に、グラウンドで“検証”してみた。
「ホームベース前」はやはり不適当であろう。
時計と逆回りでタッチにいくのだから、突っ込んでくる走者のスピード、勢いには勝てない。
さまざま位置に立って、実際にタッチプレーの動きを繰り返してみて、「ここなら!」と納得がいったポイントが、左バッターボックス前の、一塁線が始まるあたり。つまり、今ほとんどの捕手がバックホーム時の立ち位置にしている「ホームベースの真ん前」から右に1歩ズレた場所だった。
そこで立って、返球を受けて、突入してくる走者に横からタッチにいく。
この動きなら追いタッチにもならないし、走者の本塁突入の妨げにもならずに、したがってタッチプレーの瞬間の捕手と走者の交錯、つまりぶつかってケガをする危険も最小限にとどめられる。