プロ野球亭日乗BACK NUMBER
今度はメジャー最強投手から2ラン!
大谷翔平「価値ある1本」の尊さ。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byAP/AFLO
posted2018/04/05 11:55
2点差で追いかける苦しい展開の中……快心の2ラン! 2日連続の本塁打に、スタジアムは再びのスタンディングオベーションに。
「ヒットでいいかなと思ってコンパクトに振った」
「確信はなかったです。二塁にランナーがいましたし、ヒットでいいかなと思ってコンパクトに振ったつもりだったのが、何とか入ってくれてよかったと思います」
前日はベンチに戻っても“サイレント・トリートメント”でナインに無視されたが、この日はすぐさま祝福の手が伸びてきた。
予想外の一発ではない。
選手も、ファンも期待したところで飛び出した一撃は、もはや普通のことなのである。
「苦しい場面でいい1本が打ちたい」
前日の試合後の記者会見だった。
ホームデビュー戦での本塁打を「チームの勢いが打たせてくれた部分もあった」と言っていた大谷が、次の一発に思いを込めた言葉だった。
チームが苦境のときに、自分のバットで流れを切り開きたい。そう望んでいた1本を、わずか1日後に現実のものとしてしまった。
それがチームの一員として、大谷が放ったこの1本の価値である。
そしてもう1つ、メジャーで二刀流に挑戦する打者・大谷にとっても大きな意味のある一撃でもあった。
打った相手に価値があった。
敵は昨季もサイ・ヤング賞という最強投手!
昨年18勝4敗の最多勝で自身2度目のサイ・ヤング賞を受賞しているクルーバー。
まったく同じ軌道からフォーシームとカットボール、そして決め球のシンカーを自在に操って打者を料理する。
オープン戦ではバットをへし折られての二飛に打ちとられて、メジャーの凄さを改めて思い知らされた。そんなメジャー屈指の好投手との対戦だった。
「サイ・ヤング賞をとっている投手で、見れば誰もが素晴らしいというのはわかる投手だと思う」
第1打席は軽くあしらわれた。
打者として出場した2試合では、ほとんどの投手が内角を軸にした組み立てだった。これに対してシンカーボーラーのクルーバーは、得意球のシンカーを軸に外角を使った組み立てで攻めてきた。