松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹の「最悪」と「戦える」。
初めて帯同する妻子もプラスに影響?
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2018/04/04 14:30
宮里優作と並んで、マスターズ恒例の「水切りショット」に挑戦する松山英樹。
言葉とは裏腹に、まんざらでもないのでは?
しかし、言葉とは裏腹に、松山の表情は終始、穏やかだった。マスターズ前に最後に見た松山はイライラした様子が伝わってきていたが、この日の松山は熱くはないが冷めてもおらず、言葉では「最悪」「ゼロ」と言いながら、「まんざらでもないのでは?」と思わせてくれる何かを発していた。
それでも松山は、自分から「ここは良い」とは言わない。だから代わりに「ここは良いのでは?」と思えるところを考えてみた。
アーノルド・パーマー招待で復帰して以来、練習量は抑えざるを得ないと言っており、実際、マスターズウィークを迎えた今も練習に対しては「もっとできたと思うところはあるけど仕方ない」と満足できるレベルには達していない。
だが、ともあれ練習はできている。前週の金土日、そして今日の火曜日。オーガスタですでに63ホールも回れているし、球数は減らしているにせよ、ショット練習もチップ&パット練習もできている。それは、とにもかくにも「良いこと」だ。
好調でないからと言って、勝てないわけではない。
7回目のマスターズ出場を迎えている今年、オーガスタのコース上に何か新しいところ、留意すべきところは「何もないです」。
逆に言えば、それは松山がよく知っている状態のオーガスタだということ。「それなら経験と知識が活かせますね?」と問いかけると、「それを活かす技術があれば」。
その技術を持ち合わせていることは、世界6位のランキングが実証している。
そして今、松山は気持ちの面ではどうなのか? 昨年大会でも開幕前は調子は良くないと語り、出遅れ気味に発進したが、最終的には巻き返して11位タイになった。
今年も左手に不安を抱え、ゴルフそのものにも不調を感じてはいるが、窮地にある今も、自身が培ってきた忍耐力と挽回力、「戦える」という希望を胸の中に保つことはできているのか?
「それを持ってないと、試合には入れない」
そう、今の松山は好調ではないし、準備も万全ではないのだが、だから戦えないのか、諦めなければいけないのかと言えば、そんなはずはない。
目標は勝つこと? 「それは、そうです」。勝利への渇望は松山の胸の奥底で今もメラメラと燃えている。いや、燃やすことができている。それは何より「良いこと」だ。