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鹿島の「前半病」に解決策はあるか。
ACLグループ突破だが、課題も明白。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2018/04/04 11:45
今季の公式戦初ゴールを決めた鈴木優磨。鹿島らしさを凝縮したようなこの男の完全復活が待たれる。
鈴木優磨の「乗れる」ゴール。
「相手の勢いが落ちたこともありましたけど、守備の役割をはっきりさせたことで、自分たちのペースに戻ってきたんじゃないかと思います。でもいちばん重要だったのは、ハーフタイムに『球際で戦うことなど、当たり前のことをやろう』という話をしたこと。そのうえで、マークをはっきりさせたのがよかった」と植田がいう。
サポーターの声に後押しされたわけではないだろうが上海申花よりのジャッジが目立ち、試合を止め続けていたレフリーが、試合を流すようになり、ゲームにスピード感が増した。ボール奪取後の突破で、鹿島の好機が徐々に増えていく。両サイドを使った攻撃が功を奏した。
58分左から展開した攻撃。こぼれ球に詰めていたのが「ああいうこぼれ球を決めるとFWとしては乗れる」と自身のゴールを振り返った鈴木で、63分にはレアンドロのゴールをアシスト。2-2で試合終了。鹿島のグループリーグ突破が決まった。
「うちのチームにヒーローはいらない」
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「最低限の結果。誰も満足している選手はいない」と1ゴール1アシストの鈴木。試合後、「ヒーローだね」とたたえると、「そういう言い方はあまり好きじゃない」と表情を一切崩さずに答えた。
「試合前に満男さんと、うちのチームにヒーローはいらないという話をちょうどしていた。自分だけがいいプレーができればいいというんじゃなくて、チームのために自己犠牲を払い、チームの勝利に尽くすというのが満男さんの考え方だから。
満男さんがいるから満男さんに任せるんじゃなくて、若手とか関係なく自分が引っ張っていくという気持ちでやれば、今日の後半みたいにいいサッカーができると思うので。他人任せというのが、自分も含めて、最近はあるのかなって思います」
自身のゴールとアシストのシーンを振り返るとき、わずかに笑みがこぼれたように見えたが、鈴木の硬い表情は変わらない。植田もまた「まだ1試合残っているから」と気持ちを緩めることはなかった。ミックスゾーンで無防備に安堵感を漂わせる選手はいなかった。
4月17日ホームに水原を迎える最終戦。首位突破のためには勝ち点1以上で十分だが、アウェイで下した相手にドローでは誰も納得はできないだろう。