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F1開幕戦で、驚愕の逆転劇発生!
人間のミスの連鎖が生んだドラマ。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2018/04/01 08:00
盤石のリードのはずだったハミルトンは、ピットアウトしたベッテル(5番)が自分の前に出たのを見て思わず「僕がミスしたのか?」と無線でうめいた。
ピットアウトした2台が次々とリタイア。
22周目、ハースは4番手を走行していたケビン・マグヌッセンをピットインさせる。
タイヤを交換してピットアウトしたマグヌッセンだったが、直後にスローダウン。コース脇にマシンを止めてリタイアとなった。
その2周後、マグヌッセンに代わって4番手を走行していたチームメートのロマン・グロージャンがピットインする。
だが、グロージャンもピットアウトした直後にコース脇にマシンを止めてしまった。
どちらのリタイア理由も、タイヤを完全に装着できない状態でピットアウトさせてしまったため、チームから無線でただちにマシンを止めるよう指示されたからだった。
当初、アクシデントはタイヤ交換を行う道具に何らかの不具合があったからではないかと疑われた。
しかしレース後、チーム代表のギュンター・シュタイナーはそれを否定。原因は「ホイールガンもナットも昨年と同じで、これまで問題はなかった。残念なことだが、トラブルの原因はメカニックのヒューマンエラー」だったと明かし、こう続けた。
「十分な練習ができていなかったことが影響していたのかもしれない」
上位入賞を逃し、罰金もとられたハース。
ピットストップクルーは、普段はメカニックとしてマシンの整備を行っている。ニューマシンで初めてレースを行う開幕戦は、メカニックにとって最も忙しい一戦。しかも、ハースは10チームの中で最もスタッフの数が少なく、ひとりひとりにかかる負担は大きい。
グランプリ期間中、思うようにピットストップの練習時間が取れなかったということをシュタイナー代表は言いたかったのだろう。
レースで上位入賞を逃しただけでなく、安全でない状態でピットアウトさせたとして、FIAから1万ユーロ(約130万円)の罰金が科せられた。
そして、実はこのハースのリタイアによって、もうひとつの人間ドラマが生まれているのだ。