F1ピットストップBACK NUMBER
F1開幕戦で、驚愕の逆転劇発生!
人間のミスの連鎖が生んだドラマ。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2018/04/01 08:00
盤石のリードのはずだったハミルトンは、ピットアウトしたベッテル(5番)が自分の前に出たのを見て思わず「僕がミスしたのか?」と無線でうめいた。
コンピューターに予測できなかったもの。
そのマージンの13秒というのは、VSCモードで走行したときのタイムと、ピットレーンを制限速度で走行したときのタイムの合算だ。だが、その区間には数十メートルだけ、マシンの走行速度が設定されていない区間があったのだ。
それは本コースからピットレーン入口の間の、いわゆる「ピットロード」と呼ばれる区間だ。
コンピュータはピットロード区間もVSCモードで走行したときと同じ速度で計算していた。コンピュータにデータを書き込んだのはメルセデスのエンジニアだった。だが、ベッテルはそのピットロードを限界で攻め、コンピュータがはじき出したタイムを上回る速さでピットイン。コースを駆け抜けてきたハミルトンを抑えて、トップのままコースに復帰したのだ。そしてそのまま逆転勝利を挙げた。
どんなにF1が高度な戦いに進化しても、そこで戦うのはドライバーであり、エンジニアであり、メカニック。人間である限り、ミスは起きる。今年のオーストラリアGPは、まさにそんなレースだった。