猛牛のささやきBACK NUMBER
オープン戦4本塁打で突如注目株に。
オリ宗佑磨、今は天真爛漫を封印。
posted2018/03/22 17:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
勢いだけではない領域に入ってきた。オリックス4年目の21歳、宗佑磨である。
「いい緊張感でやれています」
宗はそう言って白い歯をのぞかせる。
オープン戦初戦の3月3日横浜DeNA戦に、1番センターで先発出場した宗は、第1打席の2球目を振り抜き、ライトスタンドへ先頭打者本塁打。そして翌日の第2戦も、第1打席で三塁線を抜く鋭い打球を放つと、50m5秒8の俊足でランニング本塁打とし、2日連続の先頭打者本塁打という離れ業で強烈なインパクトを残した。
その後も2本の本塁打を加え、12球団で3位タイの4本塁打を記録。打率も3割台をキープしている(3月21日時点)。
キャンプは二軍スタートだったが、二軍の米村理チーフコーチのもと、「ボールをこすらないで捉える。バットで噛む感覚」(宗)を習得し、それが強い打球につながった。紅白戦で一軍メンバーを相手に安打を積み重ねる宗を見て、福良淳一監督は「一番バットが振れている」と絶賛。一軍昇格を決めると同時に、内野手だった宗を外野手にコンバートさせ、オープン戦ではここまで全試合に先発起用している。
昨年は憧れてやまないイチローを研究。
日本人の母とギニア人の父を持つ宗は身体能力とセンスに恵まれ、横浜隼人高校時代から注目を集めた。そして2014年のドラフト2位でオリックスに入団。1年目は相次ぐ怪我に苦しんだが、2年目からファームで試合出場を重ね、9月には一軍デビューも果たした。
3年目の昨年は、憧れてやまないイチロー(マリナーズ)の映像を何度も見て研究し、右足を上げて引きつけ、始動を速くする打撃フォームに変更。「以前よりボールをゆっくり見られるようになった」とファームで安打を量産し、「笑いが止まりません」と手応えをにじませた。
そして8月、一軍に昇格。しかし一軍ではなかなか初安打が出なかった。
「どうしても緊張しちゃうんですよね……」
緊張でガチガチになり、打撃でもショートの守備でも、本来の柔らかく伸びやかなプレーが発揮できていなかった。