相撲春秋BACK NUMBER
栃ノ心が教えてくれたふたつのこと。
親方との絆、そして休場する勇気。
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byJMPA
posted2018/03/09 17:45
今年の初場所、平幕優勝を決めた直後の栃ノ心。192センチ、177キロの見事な体躯と、類まれな腕力を誇る。
若い力士の中には休む勇気を持てない者も。
この3月の大阪場所では、稀勢の里が6場所連続の休場を決断した。
昨年の3月場所で大胸筋付近を負傷しながらも強行出場し、劇的な逆転優勝を果たした、その代償は大きかった。
ケガに苦しむ力士たちは多い。番付降下を憂い、長期的に休む勇気を持てない若い力士も少なからずいるだろう。
そんな後輩力士たちの励みとなり、一筋の光明をもたらしたのが、栃ノ心の存在でもあった。
手術した右膝の靱帯は、昨年1月初場所中に、再び切れてしまったままだ。まるでギリシア神話の「ケンタウロス」のごとき下半身を持つが、それは切れた靱帯を筋力で固めて守るための、ひたすらなトレーニングと四股の賜物である。
今年31歳となる栃ノ心は、
「もうひとつ上を狙う最後のチャンスかもしれませんね。もっと稽古して頑張らないと」と控えめに口にする。
情熱を内に秘めた苦労人。地に足をしっかりとつけ、踏みしめているCOOLな“チカラビト”だ。