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川崎に大卒生え抜き選手が多い理由。
憲剛「うちには目利きのスカウトが」
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2018/02/13 11:40
川崎フロンターレはいい意味で、他と全く違う文化を持つクラブである。その一端に「大卒生え抜き」の系譜もあるのかもしれない。
「絶対に欲しかった選手」の言葉どおり。
「落ち着いてできた。大舞台でいきなり使ってもらい、ありがたかった。貴重な経験を積むことができた」
本職はボランチ。大学時代はコーチから「長谷部(誠)になれ」と言われ、あらゆるポジションをこなした。大学2、3年のときはサイドバックでプレーし、4年ではボランチとセンターバックで活躍。'17年のインカレはMVPに輝いた。「絶対に欲しかった選手」とその才能に惚れ込む向島スカウトは口元を緩めながら、堂々としたデビュー戦のプレーに驚きを隠さなかった。
「1対1に強いし、フィジカル面でもプロで十分にやれると分かっていたが、チームのやり方をすぐに覚えるのは難しいもの。それなのにフロンターレのメンバーとして、普通にプレーしていた。たいしたものだと思う」
大卒選手が主軸を担ってきたクラブの系譜を継ぐ者としても、向島スカウトは期待を寄せていた。
大卒選手はほとんどのJクラブで即戦力として迎えられるものの、コンスタントに出場できるのはひと握り。ましてその先、「生え抜き」と呼ばれ、主軸となる人はさらに減る。
J1でも移籍で選手を多く集めるチームほど、出場機会をつかむのは難しく、すぐにJ2クラブへレンタル移籍するケースも珍しくない。その後レンタル元のチームに戻り、戦力となる選手はごく希と言ってもいいだろう。
憲剛「うちは目利きのスカウトがいるから」
世知辛い昨今のJリーグで、今の川崎Fは異質と言える存在かもしれない。クラブの最古参となり、看板を背負う中村の言葉には説得力がある。
「うちには目利きの(向島)建さん、(伊藤)宏樹さんといったスカウトがいるから。チームに合致する選手を取ってきていると思う。大卒はしっかりしている選手が多いし、クラブカラーにもマッチしている」
向島スカウトが新人選手を獲得する上で重要視するのは、人間性だという。
「プロだから試合に出られないこともある。そのとき、壁をいかに乗り越えるかが大事。自分をコントロールできないといけないし、自分で課題を見つけて、自分で努力できないといけない」
'97年のJFL時代(当時現役)から川崎Fの歴史を知る52歳はしみじみと話す。「苦労して、努力してはい上がるのもフロンターレっぽいかなと」