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中村航輔、JベストGKから代表へ。
「フィジカル、“have to”だなって」
text by
小野晋太郎Shintaro Ono
photograph byYuki Suenaga
posted2018/02/02 07:00
昨年末のE-1サッカー選手権で評価を上げた数少ない選手。中村航輔は正GK争いに割って入れるか。
「サッカーって90分中の89分はフィジカルなんだと」
1対1にめっぽう強く、試合の流れを変えるビッグセーブは今や中村の代名詞となった。チームを救ったのは一度や二度ではなく、DAZNが選ぶ週間ベストプレーにもたびたび名を連ねる。GKながら5月には柏レイソルで初めて月間MVPを受賞したほどだ。GKとしての受賞は2015年9月に西川周作が選出されて以来の快挙だった。
またJ1を見回してみると、20代前半のレギュラーを務める日本人GKは中村しかいない。日本代表GKの新星として、真っ先に名前が挙がることに異論を唱える者は今やいないだろう。
飛躍を果たした2017年、中村は大きな決意を持ってシーズンを戦っていた。
「フィジカルを上げること。これはもう1月のオフから決めてたんだよね。初めてJ1で1年間やってみて、ある程度やれたところがあった。でもリオ五輪とか、他のJ1で活躍している選手とか、もっともっと上に人がいるって、体感で気づきだした。
自分がそこに行くために何が必要か? って考えたときに色々あるけど、まずはフィジカルかなって。だからいろんな人に話を聞いたり、海外のプレーとか練習とか見まくって、ある程度勉強していったら、これはもう“フィジカル、have to”だなって」
GKとしての基礎筋力の向上。ステージが上がれば上がるほど、踏み出す力、はじき出す力、反応する力、これら一瞬の力が勝敗を左右する。シュートに負けない強い筋力は、中村が理想とするキーパーがすでに手にしていたものだった。
「よく言われているけど、サッカーって90分中の89分はフィジカルなんだと。ボールに触っているのは1分だけ。そういう中で“1分の技術”に目を向けると同時に、ちゃんと“89分のフィジカル”にも目を向けないといけないと。技術を上げるのは当たり前で、残りの1割で違いを出せるはずだって、俺は思ったから」
何かをして、一気によくなるっていうのはない。
成果は結果が示している。
昨シーズン初めて全34試合スタメン、そしてフルタイム出場を果たした。失点は33、失点率は1を切った。1試合1点以下、そしてフルタイム出場。これは中村が目標としていた2つを同時に達成するものだった。シュートを防ぐために鍛えた肩甲骨周りの筋肉は、ユニフォームがせり上がるほどに、一回りも二回りも大きくなった。
「トレーニングメニューや理論とか、色んな人や色んな意見が持ち込まれるから基本は疑ってかかる。そして自分で考える。ただ、コアの部分は一緒だから。全部そうだと思うけど、これをやったら一気に何かがよくなるっていうのはない。継続するだけだし、その人が続けられるかどうか。俺は、続けられる。
しんどいよ、しんどいけど、そういう代償を払うってのは『覚悟』をもってやれるかどうかだけだと思っているから」