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井上尚弥がスーパーフライ級を卒業。
「ヒリヒリする試合」を求めて。 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2018/01/05 17:00

井上尚弥がスーパーフライ級を卒業。「ヒリヒリする試合」を求めて。<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

リングの上で、井上尚弥だけが早送りに見えるほどスピードに差があった。彼の器にとって、スーパーフライ級は小さすぎたのだ。

ロマゴン神話が崩壊したことで、井上は落胆。

 ロマゴンは全階級を通じて最も実力があるとみなされるパウンド・フォー・パウンド・ランキングで1位。世界最強の称号を与えられたロマゴンとの対戦について語るとき、井上の目は輝いていた。

 しかし目標だったロマゴンは3月、伏兵と思われたシーサケット・ソールンビサイ(タイ)に敗れて神話が崩壊。井上は生中継のテレビ解説を務めた試合直後、はっきりと落胆したものだった。

 9月に念願だったアメリカ進出を実現させ、いったんは気持ちを高めたものの、次なるターゲットに定めたアンカハスとの年末の統一戦がとん挫。その後、アンカハスと2月にアメリカで対戦という話が持ち上がったが、またしても裏切られる形の結果となってしまった。

モンスターの快進撃はバンタム級でも続くか。

 まるで井上のモチベーションをもてあそぶかのような出来事が繰り返し起きたわけだが、この稀有な実力を持つボクサーは一時的に憤慨することはあっても、それで腐ったり、引きずったりというところが一切ない。むしろ、好機を逃すことが、新たなエネルギーになっているようにさえ見える。

「(統一戦がなくなっても)モチベーションは高いですよ。バンタム級に変えれば選手層も厚くなるし、身体も大きくなる。ランキングを見渡してもいい選手がたくさんいるし、クセのある選手もいますから」

 世界で“モンスター”のニックネームが通っている井上は、さらなる高みを目指して全身からやる気を発散している。“モンスター”の挑戦を受け止める勇気あるバンタム級チャンピオンの出現を願うばかりだ。

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