スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
ヤンキー・スタジアムと右の強打者。
ジャッジ+スタントンで100本超え?
posted2017/12/30 08:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
AP/AFLO
ヤンキースは左打者の王国だった。
ベーブ・ルース、ルー・ゲーリッグ、ミッキー・マントル(両打ち)、ロジャー・マリス、レジー・ジャクソン、ドン・マッティングリー……ほかにもいるが、球史に残る左のスラッガーが勢ぞろいだ。一方、右打ちのスラッガーは少なかった。ジョー・ディマジオ、デイヴ・ウィンフィールド、アレックス・ロドリゲス……いたことはいたが、数は少ない。
かつてヤンキースで監督やGMを務めたことのあるジーン・マイケル(2017年9月病没)などは、「ヤンキー・スタジアムで勝つには、左打者と左投手が欠かせない」と公言してはばからなかった。
なるほど、右翼が浅く、左中間が深い球場の形状を見れば、普通はそう考えたくなる。「ベーブ・ルースが建てた家」という呼び名も広く知れ渡っている。1923年に開場したとき、左中間最深部までの距離が152.5メートルもあったのに対し、右翼までの距離は90メートルしかなかった。だれが考えても、左打者に有利だ。
だが、球場の形状は変わった。'09年4月に誕生した新ヤンキー・スタジアムの左中間最深部は122メートルで、右翼までは95.7メートルある。左翼ポール際までが96.9メートルだから、他の球場とそんなに大きな差があるわけではない。しかも左中間や右中間のふくらみは、昔に比べるとずいぶん削られた。本塁打が出やすい条件は十分に整ったといってよいのではないか。
52本のジャッジ。59本のスタントンが並ぶ魅力。
しかも2017年には、大型新人アーロン・ジャッジが出現した。
ジャッジは52本のホームランを打って、本塁打王と新人王に輝いた。52本のうち、本拠地ヤンキー・スタジアムで打った本塁打は33本。そのうち12本は、センターより右側に飛んでいる。それも、ボールを強く叩いたというよりも、巧くバットに乗せて客席まで運んだ印象の本塁打が多い。反対方向にこれだけ本塁打を打てる右打者といえば、彼以外にはJ・D・マルティネスぐらいしか思い当たらない。
これを、ヤンキースに新加入したジャンカルロ・スタントンに当てはめたら、どうなるだろうか。
'17年のスタントンは、59本のホームランを打ってナ・リーグ本塁打王に輝いた。59本のうち31本は、本拠地のマーリンズ・パークで放っている。ただ、この球場は、ヤンキー・スタジアムに比べると本塁打が出にくい。