バスケットボールPRESSBACK NUMBER
栃木ブレックス、指揮官交代の岐路。
秘密の映像でチームワークよ再び。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byYuki Suenaga
posted2017/11/11 09:00
田臥らが培ってきた栃木スピリットは、チームに浸透しているはず。ならばそれを思い出すだけだ。
「小さくて細かい部分をどれだけできるか」(田臥)
「チームとしてまとまれ」と言葉で伝えるよりも、まとまっているときに取る行動を提示して実践する方が、選手は自覚を持てる。その自覚がチーム力、成績の向上につながる。
そうやってチーム力を育んできたのが栃木だった。
ジェッツとの試合後、キャプテンの田臥は以下のように証言した。
「今回だけではなくて、ずっと前から……例えば、昨シーズン優勝したチームでも出来なかったときがあった。そういう映像をミーティングで見せられていたことで、だんだんできるようになっていった。だからこそチームを作り上げていけたんです」
そして、こう続けた。
「今までいたメンバーは映像を見せられて、またわかったことがある。新しく来たメンバーには、強いチームを作っていくためには、小さくて細かい部分をどれだけできるかが必要なんだよ、というのを改めて感じてくれたと思う。そういうことがみんなで自然と出来るようになれば気持ちが1つになると思います」
昨季ファイナルでも最後まで執念を見せ続けた。
指導者が何度も“チームに大事なのは守備です。大切なのは団結心です”と繰り返しても、チームに浸透しないケースは多々ある。だからこそ団結力を育むために、具体的な策を打つ。そして、それがおざなりに見えるならば、何度でもその作業を繰り返していく。昨シーズンのファイナルでは田臥が、現在はリハビリ中のジェフ・ギブスが試合の最終盤までルーズボールに飛び込むようなシーンが見られた。そこには確かな方法論が存在していたからだ。
チャンピオンシップの準々決勝でも、最大22点差をつけられながら、クォーターごとに目安となる点差を設定して、少しずつ点差を縮めて、最後には逆転したのも有名な話だ。
彼らは決して最先端のバスケットボールを探求しているわけではない。しかし、バスケットボールのみならずスポーツ界、あるいは一般社会の組織にまで参考になるような本質を追求しているのだろう。
昨シーズンまでチームを率いたトーマス・ウィスマンHCから長谷川HCに体制が変わったことで、取り組み方も変化していた。その過程で失われかけたものを、安齋HC代行は取り戻そうとしている。多くのメンバーが入れ替わったとはいえ彼らがまとまれば、優勝候補であるジェッツを倒せたのは収穫だろう。