【NSBC補講I】 池田純のスポーツビジネス補講BACK NUMBER
DeNA前社長・池田純が今だから語る。
ラミレス抜擢と“暗黒期”の秘話。
text by
池田純Jun Ikeda
photograph byKyodo News
posted2017/10/27 12:45
池田氏はラミレス監督就任発表の会見で「チーム全員の力で闘っていくという姿勢が見えた。勝負できるんじゃないかと思った」と語っていた。
采配以上に他人のモチベーションを下げない。
初めは「パフォーマンス」「人気取り」など批判的な意見もありました。でも、今の結果を見たら、そんなことは言えないでしょう。彼は選手とのコミュニケーションを重んじ、他人のモチベーションを下げる行動をしません。
クライマックスシリーズ(CS)では采配で注目を集めましたが、根底には普段の振る舞いがあります。CSでの激戦を通して、選手とのさらに厚い信頼が構築されていったのではないでしょうか。
ベイスターズの日本シリーズ進出が決まってはじめに思い浮かんだのは、閑古鳥が鳴く横浜スタジアムでした。今となっては信じられないかもしれませんが、ベイスターズには長い“暗黒期”がありました。最下位が当たり前で、観客は8000人程度しか集まらない。
物理的には離れていても心は残っているのだ。
暗黒期には、たくさんの人が傷ついた歴史があります。
ベイスターズでGM補佐・マネジャー統括を務めて下さった浅利光博さんが、昨年胃がんで亡くなられました。
浅利さんは、暗黒期を支えた功労者です。ストレスが強くかかる立場であるにもかかわらず、口数少なくも、温かく魅力的な存在でした。ギリギリまで病魔と戦いながら、チームと球団に貢献してくださいました。私が社長を務めていた間も、浅利さんにはとても力強く支えられました。亡くなったのは、61歳の若さでした。
今回CSを勝ち抜いたことで、いろいろな方から連絡をいただきました。その中には、勝てない時期に苦闘しながら、球団やチームを去らざるを得なかった方も多くいました。直接会い、食事や酒の席をともにすることで、低迷期の苦労や、心の葛藤を多く知らされました。
みな、物理的には横浜の球団を離れていても、心は残っているのだと実感しました。