Number ExBACK NUMBER
羽生結弦と「バラード第1番」。
ピアニスト福間洸太朗が絶賛の理由。
posted2017/10/26 16:00
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Asami Enomoto
五輪シーズンのフィギュアスケート・グランプリシリーズが幕をあけ、初戦のロシア大会ロステレコム杯で羽生結弦が登場した。
今季、羽生がSPに選んだ曲は、2014-15シーズンから2季連続で使用したショパンのピアノ曲『バラード第1番』だ。'15年グランプリファイナルでは世界歴代最高(当時)の110.95点をマークした縁起のよい曲でもある。
同曲は若きショパンが作った初期の代表作で、華麗なピアニズムと旋律が印象的だ。羽生はピアノの曲に合わせ、ジャンプやスピンはもちろん、鍵盤の上を跳ねるようにステップを踏んでいく。
実はこの『バラード第1番』、原曲は9分半以上にも及ぶ。フィギュアスケートのプログラムとして使用する場合は、SPであれば2分40秒、フリーは女子が4分、男子は4分30秒(前後10秒の増減は可)と時間が定められているため、編集が必要不可欠となる。
つまり、同曲をSPで使用する場合は、原曲の約4分の1の長さに編集されるというわけだ。
「彼は本当に“音”を捉えるのが上手な選手です」
'15年に行われたアイスショー『Fantasy on Ice』の『バラード第1番』で共演。フィギュアファンの間でも知られるようになったピアニストの福間洸太朗は羽生を絶賛する。
「フィギュアスケートで使用する場合は、どうしても原曲の大部分が削られてしまう。どうしても音楽家の視点で見てしまうので、最初の頃は少しもどかしさも感じたりしました。羽生選手自身もそう感じる部分があったようなのですが、2分40秒と限られた時間のプログラムの中で見事にエレメンツを凝縮している。あと、これはいつも見ていて感じるのですが、彼は本当に“音”を捉えるのが上手な選手ですよね」
また、ピアノを弾く上では、楽曲が持つ世界観から離れずに、その曲をいかに自分らしく表現するかも重要だと話す。