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羽生結弦と「バラード第1番」。
ピアニスト福間洸太朗が絶賛の理由。
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byAsami Enomoto
posted2017/10/26 16:00
「バラード第1番」にちりばめた表現力と美しさ。羽生の演技は、有名ピアニストの情感にも訴えかけるものだ。
ショパンの真髄に迫らなければならないからこそ。
「『バラード第1番』も、何百万人という人が弾くわけですが、それぞれの人が感じる楽曲の世界を表現することも必要ですし、作曲者であるショパンの真髄に迫らなければなりません。ピアノを弾くときはいつも、作曲家の心に一歩でも近づきたいと思っています。その曲がどういう経緯で作られたか、作曲された時代背景などを学び、その曲に秘められたストーリーを理解することは意識しています」
こうした音楽への理解や解釈は、フィギュアスケートに通じるところがある。
プロトコル(採点)のプログラムコンポーネンツ(演技構成)に、音楽に合った身のこなしやスピードの変化、演技をこなしているかを評価する「PE(パフォーマンス)」や、音楽を理解し、それに合った動きや表現がされているかを評価する「IN(インタープリテーション・オブ・ザ・ミュージック)」という項目があることがそれを表しているだろう。
共演したアイスショーで求められたアドバイス。
福間は共演したアイスショーで、羽生から「3拍子の音の取り方が難しいのでどうしたらいいか」とアドバイスを求められることもあった。
「羽生選手は、曲(バラード第1番)を気に入っているんだけど、まだまだ演技に納得していないんだなと感じました。具体的に言うと、4分の6拍子(3拍子2回で1小節)だから、3拍子を1つに大きく拍として捉えてみたら、と」
それがきっかけになっているかどうかは分からないが、福間は2015-16シーズンのプログラムを見て、「すごく滑りやすそうになった」という印象を抱いたという。
「彼は本当に現状に満足しない努力家。少しずつ技を磨いてあのような素晴らしい滑りができるようになったんですね。今季、再びSPに『バラード第1番』を選んだと聞いて驚きました。しかし、それだけこの曲に思い入れがあるということでしょうし、自信のあるプログラムなんでしょうね」