Number ExBACK NUMBER
羽生結弦と「バラード第1番」。
ピアニスト福間洸太朗が絶賛の理由。
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byAsami Enomoto
posted2017/10/26 16:00
「バラード第1番」にちりばめた表現力と美しさ。羽生の演技は、有名ピアニストの情感にも訴えかけるものだ。
スケーターはアスリートであり、アーティストだ。
常に現状に満足せず、失敗を恐れずチャレンジする姿勢を貫く羽生や、多くのスケーターの競技に取り組む真摯な姿から、福間自身も大きな刺激を受けている。
「彼らはアスリートであり、アーティストでもあります。自分自身にどんどん挑戦して、理想を越えて、限界に挑戦する。その姿勢を目の当たりにして、自分自身もガラッと変わりましたね。たとえば時期によっては、私たちも演奏会が続いてハードスケジュールになることがあります。さらにはまったく異なるプログラムを1カ月間で、3つ4つ準備しなければなりません。そうなると1つのプログラムにかける練習時間も限られ、気持ちを切り替えるのも実は大変なんです。
羽生選手の不屈の精神といいますか、妥協しない姿を目の当たりにしてからは、そういった状況に直面しても“これは自分が成長するチャンスを与えてくれているんだ”、“そういう試練をいただいているんだな”と、前向きに捉え、何においても挑戦できるようになりました」
命がけでリンクに上がっている姿に心を打たれて。
実は、福間は自ら“スケオタ”と公言しているほど熱烈なスケートファンだ。しかし、ドイツを拠点に1年中、世界各地で演奏会を行う忙しい日々を送っているため、ネット観戦が中心。「公式戦を会場で観戦したことが1度もないんです」と残念がる。
「アイスショーには出演させていただいているのですが、なかなかスケジュールが合わなくて。でも、1度は行きたいと思っています。選手にとっては生きるか死ぬかの戦いですし、命がけでリンクに上がっているわけですからね。そういう場面をぜひ生で見たい。
今季は平昌五輪もあるので本当に楽しみ。羽生選手はアイスショーでも練習でも、常に全力投球ということが十分伝わってきているので、大舞台でどんな滑りを見せてくれるか期待しています。周りからこれまで以上に注目されるとは思いますが、どうやって自分をコントロールし、本番に臨むのか。そういった点も興味深いですね」