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フェラーリとマクラーレンの大誤算。
ベッテル楽勝を導いた、雨のセパン。
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byHiroshi Kaneko
posted2010/04/05 14:30
スタート直後の第1コーナーでトップに立ち、前2戦とは異なりノートラブルで優勝したベッテル
「難しい週末だったよ。昨日の予選では大ドジこいて、今日のレースはエンジン・トラブルでリタイアときた!」
決勝レース直後、アロンソの愚痴がこぼれた。「雨が降ればいいなぁと思って最初のスティントをロングで引っ張ったんだけど雨は来ないし、今日はレッドブルの連中にずいぶんいい目を見させてしまったな。予選を普通どおりにやってたら、もっとレッドブルを苦しませることができたと思うけどね」と言い、最後は「ま、リタイアとはいえ失ったのは2点だから大勢に影響はなし」と、締めくくった。
マレーシア・グランプリはベッテル→ウェバーのワンツー・フィニッシュでレッドブル勢の完勝。3位はメルセデスGPに初表彰台をもたらしたロズベルグだったが、レッドブル勢の後姿を拝めたのは序盤のみ。フェラーリはマッサの7位、マクラーレンはハミルトンの6位が最高位。彼らは予選で自らの掘った墓穴にはまってそこから出るのに四苦八苦。その失策がレッドブルに大楽勝をもたらしたのだった。
フェラーリ、マクラーレン、メルセデスの賭けは裏目に。
アロンソのいう予選の大ドジは、3セクションに区切られたノックダウン方式の最初の20分で起きた。予選が始まるとほぼ同時にサーキットにシャワーが襲来。多くのドライバーは晴れ雨兼用の浅い溝が刻まれたインターミディエイト・タイヤでコースイン。しかし、ピットに残っているドライバーも数人ほどいた。メルセデスGP勢、マクラーレン勢、フェラーリ勢、レッドブルのウェバーら強豪連である。それぞれのチームは局地的天気図で雲の様子を見、このシャワーはすぐに上がると読み、それならインターミディエイトではなく、乾いた路面用のスリックタイヤで出て行った方がタイムが上がるとしてピットで待機していたのだ。
コース半分が晴れ、半分は雨というセパン・サーキット。
マレーシアGPの舞台となるセパン・サーキットは不思議な雨の降り方をするところで、コースの半分は降っているのに半分は乾いていたりして、この時もまさにそんな雨の降り方だった。しかしコース半分の降雨とはいえ、5分待っても、7分経っても止まない。ここでシビレを切らしたようにウェバー、そしてメルセデスGP勢がインターミディエイトでコースに飛び出して行く。
セッションは残りほぼ10分、遅れてはならじとマクラーレンもフェラーリも慌ててコースイン。しかしわずかの差だったが、時すでに遅し。路面はシットリと濡れそぼり、ハミルトンがスピン! バトンはコースアウトしてグラベルにはまり抜け出せない、テクニシャンのアロンソまでもが2回転のクイックスピン。その後フェラーリ勢、ハミルトンらは晴れ用のスリックタイヤとは真逆となる深溝のウエット・タイヤに履き換えて渾身のアタックをかけたが、過ぎたるはなお及ばざるがごとしということで、タイムがまったく伸びない。バトンはグラベルにはまる前にぎりぎり最初のセクションを通過するタイムを出してはいたが、マシンがグラベルから帰ってこないとあって、次に進めない。ここにバトン17位、アロンソ19位、ハミルトン20位、マッサ21位と、目を疑うべきスターティング・グリッドが出現したのだ。