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「リャンの生き様そのものが仙台」
ベガルタの象徴、梁勇基という男。
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/10/03 08:00
梁勇基は、押しも押されもせぬ仙台のバンディエラだ。ルヴァン杯で勝てば彼にとって、そしてクラブにとっても初の主要タイトルになる。
手倉森時代の主力で残っているのは3人だけ。
リーグ初制覇を寸前で逃したシーズンから5年の歳月が流れ、チームは様変わりした。'13年に退任した手倉森誠元監督(現日本代表コーチ)時代の主力で残っているのは梁勇基、菅井直樹、富田晋伍だけ。クラブは徐々に世代交代を進め、今季のルヴァン杯ではその成果が出ている。渡邉晋監督は経験豊富な3人をほとんど休ませ、積極的に若手を起用。35歳になった梁勇基は、クラブとしての成長を実感していた。
「チーム全体の力でルヴァンは勝ち上がってきた。チャンスをもらった若手たちが期待に応え、リーグ戦にもつなげている。クラブの将来につながると思う。俺は1試合しか出てへんし(笑)」
ルヴァン杯の準々決勝は、約2年半ぶりに北朝鮮代表に招集されて欠場。平壌にいる最中、鹿島戦で下部組織出身(仙台大を経て加入)の奥埜博亮が2ゴールを決め、準決勝進出に貢献した。
「同じような生え抜きの選手が力を付けて、活躍するのは個人的にうれしい」
'12年の加入当初から奥埜の才能を認めており、「こいつは絶対にくると思っていた」と明かす。本人には「好きにやれ」としか声をかけたことはないが、光る攻撃センスを感じ取っていた。成長著しいのは奥埜だけではない。高卒3年目の西村拓真も伸び盛りで、スタメンを争うようになった。
「若手に追いやられていくのがベテラン」でも……。
梁勇基自身、若手らの成長をのんびりと見守るほど、余裕はない。これまでは絶対的な存在として君臨してきたが、リーグ戦でベンチに座る機会も増えた。22節からは5試合連続で控え。「若手に追いやられていくのがベテラン」と冗談まじりに話すが、簡単に世代交代の波にのまれるつもりはない。
「ぬるま湯につかって、ちんたらしていると、チームにとってもよくない。俺はここで踏ん張らんと。(若手に)負けるつもりはないよ。その気持ちを失えば、終わりやし、プレーで見せられなくなったら、もう辞めるとき」
普段は静かな口調で淡々と話す男も、珍しく語気を強めた。35歳を超えて一線で活躍する選手たちの姿も刺激になっている。同じようにクラブ一筋でプロキャリアを過ごす川崎フロンターレの中村憲剛には、プレーヤーとして尊敬の念を抱く。
「あれだけ一線でやっている人がいるんだから、俺も頑張ろうと思う」